サマー！部活動のお時間です！～文化部編～｜リアクション

サマー！部活動のお時間です！～文化部編～

○謎の霧と島――寝子島書房研究会（新聞完成）

「ＮＭＲは広く寝子島の人からも募ればいいと思うのだ読者の心を鷲掴みなのだ！」
　そう言って取材に出かけた真央。
「こんな格好で街を練り歩けば人目を惹くのだ記事に興味持ってもらえるのだ、真央ちゃんは先従隗始大好きなのだ♪」

「もう何度もこの格好で寝子島走り回ってるのだ♪　みんなの分の褌とサラシも用意してあるのだ一緒にやろうなのだ」
　確かに人目は惹いていたが、なかなかみんな近づいてきてくれない。
「んー視線は集まってるのになんでみんな目をそらすのだ……んっ？　あれは円ちゃんなのだ？」　
　桜庭円が漁師らしきおじさんと話をしている。
　その隣では御剣刀が、にゃーくんに煮干しをふりふり、あげている。
「円ちゃん、刀ちゃん、にゃーくんも、こんにちはなのだ～♪」
「あっ、真央ちゃん」
「こんなところで何してるのだ？」
「よくぞ聞いてくれました！」
　円は大事そうに抱えた本を開いた。
　
　寝子島周辺、夏の間、霧の濃い日に現れるといわれる島があるという
　我々調査員も、その島を、探索し発見し
　地図に書き込んだのだ
　しかし次の日、探しに来た時には影も形も無かったという
　『謎の霧と島』より（寝子島書房刊）

「ロマンだよロマン！　霧の濃い日に現れる島ってカッコイイ！
　寝子島書房研究会のフィールドワークに行くことにしたんだ」
　桜庭円は、寝子島書房研究会に所属している。
　自称文化部、部室はまだ無く、不定期開催である。
　活発な団体とは言えないが、寝子島書房への愛だけは譲れない円。
　猫のにゃーくんと共に、友人の刀にも手伝ってもらって、幻の島を探しに行くことにしたのだ。
「すごいのだ！　ＮＭＲなのだ、真央ちゃんも新聞部として取材に行きたいのだー！」
「それじゃ一緒に行こうよ。漁師さんと交渉したら、漁船出してもらえることになったんだ。
　漁港で暫くバイトすればチャラだって！　やったね！」
　ノリノリの二人と違い、刀は複雑な表情だ。
「って漁港でバイトかよ！？　くっ既に約束してしまったし仕方がない、こうなったら成果を出すぞ！」

「霧に隠された島か……らっかみや神魂、妖怪の存在を知っていると妄想とかじゃ片付けられないからな」
（だけど胡散臭い、情報の出所が寝子島書房の本という所が尚更胡散臭く感じる）
「大丈夫、GPSとコンパスと、付録についてた地図あるから。大丈夫！　寝子島書房の情報だよ！」
「いや大丈夫と言われても、寝子島書房の本はゲームの攻略本じゃないんだから。
　面白そうだし行くけどな！　それはそれとして台詞に疑問詞付けないのか？」
「漁師さんに霧が濃くなる時期がないか聞いてみたけど、毎年ある時期に霧が濃くなるらしいんだよね？
　その日はサカナが取れないから漁は休業とか。それが今日って訳さ！」
「真央ちゃん一度戻って準備してくるのだ。救命胴衣もいるのだ？」
「僕たちの救命胴衣は持って来たから着けておこう、にゃーくん用のも持ってきたよ！　刀くんのも」
「俺も自分の分は持って来た」
　なんだかんだ言う刀だが、帽子やタオルとかロープとか懐中電灯とか諸々、冒険に必要で女の子には重たい物を持参している。
「それはよかった、じゃあこれは真央ちゃんに」
「ありがとうなのだ♪」
　救命胴衣をつけ、船の撮影を始める真央。
「一応部活動だし活動記録を付けておくか。こういうのって部長の仕事じゃないのか？」
　刀が記録をつけ始める。
「あー、書記の仕事じゃないかなー。ありがとう、助かるよ」
「これからも活動記録を付けていって、ある程度たまったらまとめて研究会の軌跡とかで本を出すか？」
　冗談のつもりで笑う刀だが、円は真面目に頷いている。
　そして三人は漁船に乗り込み、出航した。