サマー！部活動のお時間です！～文化部編～｜リアクション

サマー！部活動のお時間です！～文化部編～

　あれだけいたお客も帰り、閉店時間を迎えた海の家の片付けもやっと終わった。
　おつかれさん、とオーナーが出してくれた賄飯の美味かったこと。
　特別なものではないが、疲れた後の体には染み渡った。

「ようやく仕事が終わりましたね……お疲れ様っす」
　昌也のねぎらいに正也が答える。
「お疲れさん。くたくたでこのまますぐ寝れそうだ……でもせっかくの合宿なんだから楽しみもないとな！」
「任せてください」
　昌也は花火セットを持ち出してきた。
「オーナーから仕事終わったらコレで遊べって貰ったんでやりましょうよ♪
　ふふふ……実はさっきの子達にもこの事は連絡済みです。クラスメイトの男子は残念ながら予定があるそうで難しいって言ってましたが」
「マジか。そういうワイワイしたのは俺も望むところさ」
　喜ぶ骸だが。

　日が落ちた浜辺にたたずむやつれ気味の姿は怖かった。
　ちなみに咥えているのはキャンディーである。
「……って、やっぱ骸先輩、夜だと余計にホラーっすねｗ」
「いいんだよ。俺はゾンビなんだから。月光は俺を照らすためのスポットライトさ」
「女の子たちと一緒に花火してひと夏の思い出になると良いですよね♪」
「ジュース用意しとくな」
　正也もクールを装いつつ、うきうきと支度をする。

　それから３０分後。

「来ないな」
「来ない、ですね……」
「ああ……始めちまうか？」

　こちらの番号は渡したものの、相手のケータイの番号も聞いてない口約束。
　そう甘くはないか、と諦めムードが漂いだす。
　そのムードを吹っ飛ばすように、正也が花火をまとめて持ち火をつける。
　バチバチバチ、シュー！
　大げさに花火を振り、走り回る。光の帯があたりを照らした。
「うっしゃああっ！　やっぱこういうのっていいよな」
「まあ、贅沢を言えばそこに女の子が欲しかったけどなぁ」
　つい本音が漏れる骸。寂しく花火でもするかと袋に手を伸ばす。
「骸先輩にきりのん先輩、あれ！」
　その時昌也が声を上げ、遠くの光を指差した。
「ん？　ありゃあ？」
　女の子たちの声だ。こちらに走ってくる。
「遅れてごめんなさい～！」
　ホスト部員たちの疲れは一気に吹っ飛んだのだった。
「いいってことよ。今夜はとことん盛り上がろうぜ！」
「ホスト部合宿、夜の部スタートですね！」

　それは、忘れられないひと夏の思い出。
　話術で、気配りで、それぞれの本領を発揮して。
　ホストたちは生き生きと女の子たちをもてなした。
　夜の浜辺は、今だけホストクラブに姿を変えたのだった。