サマー！部活動のお時間です！～文化部編～｜リアクション

サマー！部活動のお時間です！～文化部編～

　船の上でみんなはお昼を食べた。
　刀が用意したおにぎりと玉子焼きもある。
　暑い中での探索だ、喉も渇くだろうと刀はスポーツドリンクを多目に持参していた。
「このへんのはずなんだけど、島、見えないねー」
　円が双眼鏡を覗く。
「その地図本当にあってるのかよ……」
　照りつける太陽の下、刀がぼやく。
「大体霧なんかどこにも……ん」
　日が陰った。
　さっきまでの晴天が嘘のように空気が湿り。
「霧が出てきただと……まさか？」
　胡散臭いと思っていたはずなのに目をこらして島を探す刀。
（こういう冒険はワクワクして楽しいよな）
　円は霧の奥に、何か黒っぽいものが見えるのに気付いた。
「むむ！　もしやあれが例の島？　地図にも載ってないよね？
　上陸してみようよ！じょーりく！」
「上陸なのだ！」
　漁師は残ることになり、三人と一匹が上陸する。
「ん……草が多いな」
　霧が濃く、周囲が見通せない。
　草をかき分けてみれば、水が広がっている。
「足は着くけど沼みたいなのだ、水褌で来てよかったのだ」
　膝まで水に浸かりカメラを構えながら真央が言う。
「引き潮の時だけ姿を現すとか、そんな感じなのかな？　ん、この匂い、何だろう？　どこかで……」
　鼻をひくつかせながら刀が呟く。

「にゃー」
「あれ、にゃーくんどうしたの？」
　にゃーくんが水際の一点を見つめ、足でてしてし叩く。
　岸辺の地面が、動いた。
　土の表面が半円型に５０ｃｍほど動いて、白い部分と金色の部分が覗く……
「お、おい、あれ」
　刀の指さすほうを見れば、そちらにもまったく同じような白と金色が見えていて。
　金色の部分が、同時に動いた。
「え、まさか？！　これ、め、目玉？」
　円が閃いた時。
　てしっ。
　好奇心旺盛なにゃーくんが動く目玉に一撃を食らわせた。
「グエエエエ……」
　地鳴りのような声と共に、目玉が閉じた。
　ザッパーン！
　同時に、地面が消え失せ、３人と一匹が海に放り出された。
「桜庭！　後木！　大丈夫か？！」
　すぐに浮かび上がった刀が周囲を見回す。
「真央ちゃん漁師の孫なのだこれくらい屁の河童なのだ」　
「にゃーくんも無事だよー。……河童？」
　あの草、それに沼……もしかして、巨大な、河童の頭だったんじゃ？！」　　　
　にゃーくんを頭に乗せて泳ぎながら円が言う。
「そう言われてみれば……」
　刀もなんとなくそんな気がしてきた。あの匂いは、河童と相撲を取ったときの匂いだ。
　もっと良く見たかったが、島はもう沈んでしまっている。
「しかし海でも河童なんだろうか？」
「河童さん～、返事してほしいのだ！　写真撮り損ねたのだ撮らせてほしいのだ」
　真央の声にも反応はない。
「やっぱり寝子島書房の情報は正しかったね！　河童の村で聞けば何かわかるかなあ？」
　目を輝かせる円。
「潜って巨大河童を追いかけるから、にゃーくん預かってくれない？」
「いいけど、今回は水の中で息はできないみたいだぞ」　
　円は息が続く限り潜ってみたが、残念ながら海は濁っていて発見することができなかった。
　船に戻った後もしばらく周囲を探してみたが河童は浮上することなく日は落ち。
　海猫様の祟りを恐れる漁師に連れられて帰ったのだった。
　
　　　　　　　　　　　　　　　　◎◎◎

「真央ちゃん、自分のバイト代代わりに漁師さんにお礼に褌をプレゼントしてきたのだ♪」
「すごい！　私も行けばよかった！」
　得意そうな真央の話を聞き終えた美咲紀は羨ましがる。
　修も頷いて、
「写真は残念だが、ＮＭＲの記事としては十分ネタになるな。執筆は真央に任せる。頼んだぞ」
「任せてなのだ！　真央ちゃんは小粋な記事を書きたいのだ」

　　
　その後新聞は無事完成。
　表紙を飾る美しい流星群や、本物の新聞さながらの野球部の甲子園での活躍記事に、部員たちは苦労を忘れて喜び合った。
　特大号が好評を博す中、数は少ないものの寝子島ＮＭＲも一部の人たちのハートを鷲掴みにしたと言う。