夏空にたなびけ、大和の旗！｜リアクション

夏空にたなびけ、大和の旗！

　続いては、第二種目『褌５０m自由形』。
　その名の通り、褌着用で２５mプール行って戻って来るというシンプルかつ明快な競技である。
　寝子高のプールはコース８までしかないので、参加人数の都合上、２回に分けて行われることとなった。
　まずは第一試合。参加選手を紹介しよう。

　【１コース】　後木真央

　【２コース】　屍骸

　【３コース】　冴木竜司

　【４コース】　財前華蓮

　【５コース】　志波武道

　【６コース】　志田朝陽

　【７コース】　青物といき

　準備万端の選手達が各コースの飛び込み台に集結。
　スタートの合図は審査員から代表して、浅井先生が行う。
「それでは位置について……褌５０m自由形・第一試合、スタートォ！！」
　青空に響く先生の声とともに、一斉に選手達は宙を舞い、プールに飛び込んだ。
　勢いよく飛び出したのは、なんと言っても現役水泳部の武道。
　理想通りのフォームで着水した彼はそのまま得意のクロールに移行して、豪快に水を掻き分けて突き進んで行く。
　それに続くのは竜司と華蓮。
　竜司も得意のクロールで、華蓮は“目立つから！”という理由によりバタフライで、武道のすぐ後ろに貼り付く。
　そこからやや遅れて続くのが、真央と骸。
　――みんな、褌を見るのだ！　こんなに泳いでもちゃんと着てれば泳ぎにもぴったりなのだ！
　と真央は横泳ぎで褌の機能性をアピール。順位よりも褌。本当に褌愛のある子である。
　そして、もう一方の骸はと言うと……先ほどの負傷も癒えぬまま水を掻き分けていた。
　――この動きに俺の腕や足が耐えられるかわからねぇ。だが、かといって守りに入る俺じゃねぇさ。
　骸の目は遥か先を行く親友の武道に向けられていた。
　――最近、スランプ気味って聞いてたが、このメンツじゃやっぱ水泳部のブドーが圧倒的だな。
　――俺もダチとして、あいつに恥ずかしいところは見せられねぇな……！
　――全身が砕け散ってもかまわねぇ……全身全霊で泳いでやらぁ！！

　ビキッビキビキビキィッ！！！

「ぐあああああああっ！！？　腕がぁっ！！　あ、脚がぁぁっ！！」
　次の瞬間、ほとばしるダメージに全身をよじらせる骸！
　アツい想いとは裏腹に、じゃばじゃばと無数の白泡を湧かせながら、骸は後方へと流れていくのであった……。
　そして、最後方に位置するのは朝陽とといき。
　泳ぐのほうを押さえつつ、しきりに褌や晒を気にしながら泳いでいる。　
　締め慣れていれば、泳ぎにも十分通用することは真央が証明してくれたところだが、逆に慣れなければ脱げやすいのだ。
「や、やべぇっ。褌がずり落ちる……ぐっ。マジで泳いだら……脱げちまうぜっ」
「にゃにゃにゃっ。浅井先生の前で、これ以上の恥は掻きたくないのにゃっ。上塗りごめんなのにゃー」
　危機感を覚えたふたりはペースダウン。褌を気にしながらじゃばじゃばと水中を進む。
　しかし、この褌脱げちゃう問題は何も彼らだけの問題ではなかった。

　＊＊＊

　反対側の飛び込み台のところで折り返し、勝負は残り２５mに突入する。
　最初に折り返したのは、依然としてトップを泳ぐ武道。竜司、華蓮、真央と続く。
　真央は残りの２５mは背泳ぎで、と褌アピールに余念がない中、トップの３人はしのぎを削っていた。
　ここで急激な追い上げを見せたのは、今大会のセクシー担当こと、華蓮だった。
「おーほっほっほっ！　美と海の女神のお通りですわっ！」
「な、なにぃ！？」
　しなやかな肢体を駆使してアップダウン。
　華麗なバタフライで、竜司と並んだ……のだが、ここで彼女に異変が！
「んっ……？　や、やばいですわっ！？」
　彼女の激しいバタフライに耐えきれず、褌が緩み始めたのである。
　うおおおおおおおおっ！！　とオーディエンスから上がる歓声。
「み、見えた！　今、見えたぞ！」
「見えてねぇし、水中だし。というか、まだほどけてねぇだろ、財前ちゃんの褌はよぉ……」
　しかし、見えたのだ。思春期の男子にはそれぞれ見たい幻が見えたのだ……！
　ま、そんなことはさておき……。
　華蓮は褌を押さえながらの泳ぎでペースダウン。急速に勢いを失い、真央にも抜かれてしまう。
「……む、無念ですわ！」
　勝負の行方は、武道と竜司の一騎打ちに。
　しかし、武道もここまでのクロールの影響が褌に出ているらしく気にしている。
　――固く結んだつもりだったが、緩んできた……。俺の水泳魂のためにも、フルチンで泳ぐわけにはいかないっ……けど！
　背後には竜司が凄まじい勢いで迫ってきている。
　止まって結びなおしたらやられる。そんな予感が後ろからガンガンきている。
　――竜司くんの褌だって緩んできているはずなのに。どうしてこのスピードで……いや、むしろ加速してるんだ！？
　彼の心境に応えるように、竜司は心の中でにやりと不敵に笑った。
　――甘いぜ。志波っ。褌なんてもんはなぁ……脱げるためにあるんだよぉっ！！
　するすると竜司の褌がほどける。しかし気にしない。何故なら、今日の彼は３枚履きっ！
　守るものがある者と守るものがない者、物語では大抵前者が勝利を手にするものだが、ここでは違う。
　水泳魂が勝り、褌を締め直そうと速度を落とした武道を抜き去る。
　そして、ギリギリ最後の一枚が半ケツ状態になったところで、竜司が堂々の一位でゴーーーーーールッ！！！！
　２位、武道。３位、真央。４位、華蓮。５位、朝陽。６位、といき。……骸、プールに浮かぶ。
　という結果に終わった。
　勝負の決め手となったのは、如何に羞恥心を捨てるか……であったようだ。

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夏空にたなびけ、大和の旗！

シナリオ

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