夏空にたなびけ、大和の旗！｜リアクション

夏空にたなびけ、大和の旗！

「恥を忍んで参加した以上、優勝しなければ出た意味がありませんわ！」
　次の選手は、いろいろと迷った末に腹を括った財前華蓮。
「ウォーキングなら、私の得意分野ですわ」
　すらりと伸びた脚を見せ付けるように、自信満々のモデルウォーキング。
　流石に、乙女の恥じらいがあるのだろう、赤フン二枚履きで、逆に履いた褌でＴバックになった後ろをカバーしている。
　そして、オーディエンスに超接近し、無駄に髪をかきあげてセクシーさをアピール。
　これにはオーディエンスも、うおおおおおーーっ！　と大興奮である。
「こ、これだよ、俺たちこれを待っていたんだよっ！　ぺちゃぱいじゃなくてこういうの！！」
「うおおおおーーっ！　財前先輩！　美人だ！　結婚してくれーーーっ！！」
　ようやく登場した、セクシーな女の子にオーディエンスの男子陣は一撃で仕留められたようである。
　本日、一番の盛り上がりを見せたウォーキングに、華蓮も満面の笑み。
「ああ……、これですわ。この歓声こそ私が浴びるに相応しいのですわ……！」
　調子に乗って審査員席にも、うっふん、とセクシーアピール。
「ほっほっほ。若さが弾けてるね。うん」と校長先生。
「ざ、財前っ。こ、高校生でそういうのはちょっと……。で、でもすごい盛り上がりだな……！」と浅井先生。
「……お、女として負けている気がするわ……！」とまゆ先生。
　おーほっほっほ、と高笑いを残し、華蓮のウォーキングは終了。
　大分、ボルテージも上がったプールサイドに、続いて登場するのは野々ののこ。
「よぉし。私も、皆のことドキドキさせちゃうんだからー！」
　白の褌と晒というザ・スタンダードスタイル。
　そんなののこはさっきの華蓮に触発されたらしく、腰をふりふりモデルウォーキングを披露。
　しかし、誰の目にも出来ていないウォーキングはちょこちょこ歩いているだけにしか見えなかった……。
　そして、華蓮に打ち勝つべく、渾身のセクシーポース。
「うっふーん！」
　とても元気の良い、うっふーん、に会場からドッと笑いが起こる。
「えー？　なんでぇー？」
　うっふーんに『！』は付かないのが世の常というもの。全力過ぎである。
　ひと笑いあったところで、最後のエントリー。旅鴉月詠のプールサイドウォーキングだ。
　と、突然。会場にＢＧＭ。祭囃子だ。
　ぴ〜ひょろろろ〜♪　とんてんとんてん♪　ぴ〜ひょろろろ〜♪　とんてんとんてん♪
　太鼓の音に乗せ、プールサイドに現れる月詠。
　――女の子は少ないと思ったが、そこそこいるようだ。まぁ伝統文化のモデルとあらば協力するのはやぶさかではないよ。
　六尺褌の出で立ち。色は白。祭で使われるのもこの六尺褌だそうだ。
　晒はビキニのように、大きな胸をしっかりと覆っている。
　そして、頭の上には法被。まるでお伽噺に出てくる牛若丸のような格好だ。
　祭囃子に合わせて走ったり、法被を旗のように振り回して踊ったり、と日本の夏を思わせるアピール。
　泳ぎもあるとのことで、ポニーテールに結った髪が、オーディエンスの前で華麗に空を泳ぐ。
　目にも耳にも楽しいパフォーマンスに、男子も女子もオーディエンスは手拍子したりして、彼女にエールを送った。
「なんだかこうして見ると褌も恥ずかしくないかも。かっこいいよね、ちょっと……」
「……はっ！　思わず見入っちまったぜ。見事なもんだな、あの踊り。俺も今年の夏祭りは褌締めるかな」
「８組の旅鴉さんか。クールな表情がたまんないな……。あんなにクールなのに、褌だもんな……ゴクリ」
　ゴクリと息を飲む音とともに、Ｔのバックになったお尻に視線が刺さる。
　けれども、彼女はそれがどうしたとでも言わんばかりに、お尻を気にすることなく踊り続ける。
　クール！　ザ・クールである！
　審査員席の前ではキャットウォークのようにゆっくりと、立ち止まってターン、そしてポーズで決める！
　わあああああっ！！　と巻き起こる歓声と拍手。
　プールサイドウォーキングのトリを飾るに相応しいパフォーマンスであった。
「……上手くいったようだな」