ご先祖様、奮闘す。｜リアクション

ご先祖様、奮闘す。

　不思議な空間で目覚めた財前華蓮は周囲を見渡し、隣にドレス姿の娘がいることに気づく。
　自分とよく似た顔だなと思う華蓮の視線がふと足元に落ち、見事にドレスの彼女の半透明な足を目撃する。

「……ほぎゃああああ！！！！」

　ずざざざっ！　と素早く後ずさりした華蓮に慌てたのはドレスの娘だ。
「慌てないで。私はあなたの先祖よ。だからあなたにそっくりだし足も半透明なの」
「えっ？　私の先祖？」
　見れば彼女は自分と瓜二つ。自分と同じ顔に脅えるなど華蓮の矜持が許さない。
「もうっ！　ビビらせるんじゃありませんわっ！　それで、ご先祖様が私に何の用ですの？　――はっ！？　まさか私の体を乗っ取ろうとするつもりじゃ……！？」
「し・な・い・わ！　私があなたに会いに来たのは助言のためよ。華蓮、もっと慎ましやかにひっそりと生きなさい。あなたのためよ」
「はぁ？　何故私がひっそりと生きなければなりませんの？」
「目立ちすぎるとよくない者の目に留まるのよ。私は名も知らない殿方の脳内で妻にされ、無理心中に巻き込まれたことがあったわ。未遂だったけど……」
　言って先祖は恐怖にぶるりと体を震わせた。
「かっー！　あなたダメダメですわね！　それくらい自分でどうにかしてみますわ！」
「できたら苦労しないわよ！」
「私はブッサイクなあなたと違って中身も見た目も美しいのです。真なる美しい者にはそんなストーカーなど現れません。おわかり？」
　肩に掛かる髪を優雅に払い除け、華蓮は挑発的に笑う。ドヤ顔で挑発された先祖の額に青筋が浮かんだ。

「……ふ、ふふ。この先祖の心知らずの子孫がー！！」

　華蓮に飛び掛る先祖。怒りが頂点に達したためか、触れられないはずの華蓮に掴みかかれている。しかし華蓮も負けてはいない。やられたらやり返すとばかり、先祖の頬を思い切り引っ張った。先祖ＶＳ子孫のキャットファイトが開始する。
「図星のようですわね！　この財前華蓮に負けるのが恐ろしいのでしょう！？」
「やかましい！　つーかぶっちゃけ私より目立つな！」
「ほほほ、浅ましい本音が飛び出ましたわね？　化けの皮が剥がれましてよ！」
「むきー！！」
　先祖の目がマジになったので、華蓮は慌てて先祖を突き飛ばした。勢い余って雲に突っ込む先祖の姿についつい高笑いをしてしまう。
　華蓮の余裕は拾い上げた精霊馬のためだ。
「知ってましてよ？　これでご先祖様はお帰りになりますのよね？」
「ぐ、ぐぬぬっ！　こ、このぜんざいカレー！！」
　悔し紛れの先祖の声に、華蓮は迷わず精霊馬をぶん投げた。
「ムキー！！　この、悪霊退散！」
　駿馬に変化した精霊馬は先祖の襟首を咥えてあの世へとまっしぐら。

「覚えてなさいよー！！」

　先祖は捨て台詞がすぐに遠ざかり、聞こえなくなる。
「ふう、悪は滅びましたわ……。これからはゴーストバ○ター財前と名乗ろうかしら」
　しかし先祖が巻き込まれた事件。目立ち続けるとそのような恐ろしい事件に巻き込まれたりするのだろうか？
「まさか、ですわね」
　有り得ない、と華蓮は自分に言い聞かせて目を閉じた。