【Side：光】暗転

　ルナティック・ローズ（花風）が闇堕ちを果たし、魔力が漆黒に染まる。
「ふ……。月光の導きは狂気へと繋がっていることもあるのよ……。みんな、私の矢を受けて狂気の中へと堕ちるがいい！」
　彼女は弓を天へ向けて真上に構え、弦を引き絞る。
　そのまま漆黒の矢を上空へ射ると、矢が空中で弾けて無数の棘となって広範囲に降り注いでいった。
「ふふ……、あの棘が刺さった者は、破壊衝動を抑えきれないわ。これでみぃんな、私と同じ……！」
　暗く沈んだ表情で唇だけを歪ませるローズ。
　その背後から、クローキングしてきた時音が抱き締めてきた！
「な、なに……？」
「……折角の……美少女が……台無し、だぞ……？」
「あなた、あの時の……！」
　２人は以前、神魂事件で百合の花が咲き乱れた経験を持つ。
「お前……笑うと……もっと可愛い……。だから笑え……」
　時音の言葉に、ローズはツンと態度を尖らせた。
「そんな甘言になんて……。私は、惑わされないから……！　どうせ貴女は他の女の子にも同じ事を言っているんでしょ……？　ああ、結婚式なんて妬ましい……」
「そんなに……結婚……したいなら……、時音が……相手になろう……か？」
「え……？」
　時音の誘いに、一瞬、ローズの心が揺らぐ。
（え、なんで私、今、ときめいたの……？　相手は女の子よ、でも強く断れないのはどうして？　このままギュッと抱き締めてもらいたいかも……）
　胸の鼓動が早まるのを感じながら、ローズは自分の気持ちの変化に戸惑う。
「無言は……承諾……とみなす……」
　時音はローズの胸元に手を滑り込ませた！
「あっ、ちょっと……。何処を触って……！？　あ、そこは駄目、駄目、だったらぁ……。ん……♪」
「フフ、ここか……？　ここが……いいのか……？」
　プロレスごっこの中で、技を掛けられて顔を歪ませるローズと技を繰り出してご満悦の時音。
　ダメージを喰らいすぎて服が脱げていくローズに、遂に時音はフィニッシュブローを繰り出す。
「さぁ……トドメを……さしてやろう」
「やだ……そんなのむりだよぅ……！」
（※らっ倫：プロレスごっこです）
　時音の右指が黄金に光り輝き始め、超振動を起こす！
「闇魔法……ゴールドゴッドフィンガー！」
「いやぁぁぁん！　ブルブルしてるぅ！」
　ローズに手刀が突き刺さろうとしていた、その時だった。

「ダムダム・散弾・AP・純銀・フルメタ、砲台うおっちっち♪」

　魔砲少女こた子の７砲身ガトリングが火を噴いた！
　時音とローズの身体は瞬時に蜂の巣になり、痛みすら感じずに消滅していった。

　哀坂 時音＆花風 冴来：脱落

「何してんの、こた子ちゃん！　関係ない人を撃ったらアカン！」
　トフゥーが避けた先に２人がいたのだ、仕方がないね。
「いい加減にしいや！　奔れ、メロスドリル！」
　召喚亀メロスが高速回転しながらこた子へ突撃！
　こた子の漆黒の翼を貫いた！
「うわ、落ちるのじゃー！」
　そのまま墜落！
「ここまでや、こた子ちゃん！　いい子やからこっちに帰ってくるんや！」
　恋人の必死の説得に、こた子の出した結論は？
「帰りたくても饅頭の魔力には抗えないのじゃー！」
　こた子はすっかり饅頭ジャンキーになっていた。
「このアンコがたまらんのじゃ……。甘い……、アンコ……、あまぃ、アンコ……アマ、アンコ……」
　隙を見て饅頭を頬張る相手に、トフゥーは目を伏せた。
「……帰ってくるつもりは無いみたいやね。仕方ない、ちょっと痛いかもやけど我慢するんやで！」
「アンコォォォォォ！」
　饅頭ジャンキーは機関銃を乱射！
「持ち堪えて、セリヌンティウス！」
　幾度と銃弾を弾いてきたセリヌンティウスシールドもひび割れ、いつ打ち抜かれてもおかしくない状態だ。
　トフゥーは盾を展開しながら疾走！
「お願いや、メロス！　力を貸して！」
　メロスが炎に包まれながら高速回転！
「必殺！　マルシーダイ・エーＧメラメラアタックや！」
　爆炎の亀がこた子の顔面に直撃！
　衝撃で機関銃の狙いが明後日に逸れた！
「外した！？　胸元の魔法石狙ったんやけど、こうなったら奥の手や！　これが、うちの！」
　もはや砕け散ったシールドを捨て、彼女が手に握るは純白の聖なるオブジェ――！
「奥の手！　豆腐や！」
「アンコォー！」
　こた子は再び銃口をトフゥーに向ける。
　狙うは、トフゥーの魔法石がある大腿部！
「「にょわああああああああ！！！！」」
　トフゥーの豆腐がこた子の胸元の渦巻き型魔法石を粉砕！
　こた子の機関銃がトフゥーの下半身を吹き飛ばした！
　そのまま２人は魔力が暴走して爆発！
　両者、相討ち……！

　雨崎 荒太郎＆西野町 かなえ：相討ち

　スティールルーラー（秋宮 叶）は、空から降ってきた棘に刺さって破壊衝動を増幅させてしまった。
「なんか物足りないなぁ。もう誰でもいいから殴らせてよ！」
　彼女は自発的に闇へ堕ちていった。
　すると彼女の背中からメキメキと腕が生えてくるではないか！
　彼女の新たな魔法は『進化』。攻撃に特化するため、最適な形状へと移行したのだ。
「ツクモガミ・アームズ、４連発現！」
　阿修羅モードとなったスティール、目の前の魔法少女や兵士たちを敵味方関係なくぶん殴りだした！
　そこへ降り注がれる黒き光線。
　機巧魔法少女・珠菊だ。
「相手が誰であろうと容赦はしない。この城には鼠一匹たりとも入れさせない」
「飛び道具か。でも関係ないね」
　スティールの行動理念は至極単純。
「何と相対しようと、何に遭遇しようと、基本的に『攻撃は防ぐ。そして近寄って殴り倒す』だけ。敵も。裏切りも。闇堕ちだろうと。俺には関係ない」
　もはや冷静を通り越して、冷徹なまでの姿勢。
　それに珠菊は純粋に感服する。
「兵器として正しいあり方だ」
「そっちこそ、無感情でバカスカ撃っちゃってさ。兵器以外の何物でもないね」
　兵器 vs 兵器。
　両者が雌雄を決する時が来た。
「標準セット。誤差修正。……消えろ」
　珠菊がスティールに向かって連射！
　その光線を、なんと金棒に当てて直撃を防ぐ荒業に打って出るスティール！
「その軌道、覚えた！」
　更に第２波の射撃を反復横跳びで回避。
　進化能力の本領発揮だ。
「早さが足りない」
　スティールが呟くと、腰元からカモシカのような足が生えだした。
　まるでケンタウロスのような形態に移行！
　四本足でのギャロップ走行で一気に城壁まで迫るスティール。
　４本の腕を振り回し、城壁の一箇所を金棒で連打！
　重衝撃に耐え切れず、城壁が崩壊！
　遂に守りが崩された！
（……守れなかった。かくなる上は……）
　珠菊はあらかじめ忍ばせていた手紙を握り、届けたい相手の顔を思い描いた。
（ヤガ＝ミンさん、受け取って……！）
　ろっこん『風をこえて』の効果で、手紙がひとりでに動き、ヤガ＝ミンのところまで飛んでいく。
　飛んでいく紙片を見た兵士たちは、負傷者を抱えながら城内へ撤退していく。
「私の指示通り。城門もしくは城壁が崩された場合、兵士たちは退却することになっている」
　銃口をスティールに向ける。
　だが、至近距離では隙が大きい珠菊にとって、もはや悲しいほど形勢不利である。
「決着を付けよう」
　珠菊が言った。
「望むところだ」
　スティールが笑う。
　両者の交差は一瞬。
　珠菊のチャクラを破壊したスティールが、珠菊の自爆に巻き込まれたのだ。
　あたりが閃光で白と黒だけの世界となる……！
「損傷率……99％オーバー……任務続行、不能……、機体の回収を……要請……」
　焼け焦げた人形のような魔法少女は、塵芥となって元の世界へ消えていった。
　一方、スティールは進化で自己修復まで兼ね備えていた。
　瞬時に五体満足まで回復すると、自分の体をくまなくチェックする。
「あー、でもこれはだめかぁ……」
　だが、肝心の魔法石に珠菊のパーツが突き刺さっていた。
　少しでも動けば、石全体に亀裂が入って砕けてしまうだろう。
「もうちょっと楽しみたかったんだけどなぁ。まぁ、仕方がない。今日のところはお開きだ」
　そう言うと、スティールは笑顔で自分の石を叩き割ったのだった。

　秋宮 叶＆エルカディア・シュルツ：自滅