【Side：光】進撃

　城門前の戦闘は熾烈を極めていた。
　ノーラの胸元の魔法石から十字型の青いビームが放たれる！
「小宇宙ビーム！」
「弾道予測完了。回避します」
　だが、機巧魔法少女・珠菊の魔法演算能力は桁違いだ。
　致命傷クラスの一撃は回避され続け、ノーラは焦燥する。
「殲滅する、殲滅する、殲滅する」
　一切の感情を切り捨て、人型砲台と化した珠菊の光線が前線を焼き払っていく。
「聞いて！　魔法少女はダメージを受けると一糸纏わぬ姿、いうなれば『繊維喪失』をしたら、倫理観や私達の世間体が危ない！」
　ノーラは闇の魔法少女側に大声で訴え続ける。
「戦えば両者辱めを負うことになるの、そんなことは避けなきゃ！」
「……何故、避ける必要が？」
　時音の魔法タケミツエッジがノーラのスカートを裂く！
「時音は……お前のその服の下の肌を、見たい……！　時音のモノに、したい……！」
　完全に変態枠です、本当にありがとうございました。
「ノーラちゃん、今助けるよ！　ええと、戦争は数だって兄貴が言ってた！」
　高梨 彩葉――本気（マジ）☆狩るトワイライト、参戦！
　トワイライトは召喚魔法で編みぐるみ部隊を召喚した。
「私の相棒、ネコテンも出ておいで！　みんなを助けてあげて！」
　すると、魔法陣からひと回り大きい猫のマスコット妖精が出現した。
　その手には、ピコピコハンマーのような鈍器が握られていた。
「え、え？　そのピコハン、血が付着してるよ！？　編みぐるみたちもなんでバールのようなものを持ってるの！？」
　コワイ！
「そんなに威力あるの？　殴ったら相手が死んじゃったりしないよね？」
「「ラリホー！」」
　編みぐるみたちとネコテンは謎の掛け声を出した。
「だ、大丈夫ってことかな？　とにかくいっけぇー！」
「「ラリホー！」」
　あみぐるみ部隊、突撃開始！
　時音がバールでタコ殴りされると、何故か彼女の服が剥げていくのだった。
「これは……！　やめろ、恥ずかしい……！」
　時音、恥ずかしさに耐え切れず、その場から撤退した。
「やった！　敵が逃げていくよ！　今の活躍見てた、りんちゃん？　って、あれ？　どこいったの！？」
　戦闘に夢中で、親友とはぐれてしまったトワイライト。
　探そうにも、闇の兵士たちが徒党を組んで襲って来る！
　トワイライトは応戦せざるを得ない。
「どうしよう、りんちゃん、無事でいて！」

　一方、リア・タワーは自らの不幸属性を遺憾なく発揮し、攻撃を一気に引き受けるデコイと化していた。
「なんで私ばっかり攻撃するのですかぁ！？」
　伊予柑のデコポンボムで吹っ飛ばされ、完全に涙目のリア。
　だが、彼女の目的は時間稼ぎ。ある意味、これはこれで目的を達成している。
「近くにいたお前が悪い、ってこういう時はそう言うんだよね！　腐臭は柑橘系のいい香りで消毒だー！」
　伊予柑はノリノリで爆弾を投げまくっていた。
「でもあの子、しぶといね……。あの光弾を食らうと痺れちゃうし……。しかも臭い……」
　カーサは被弾してはだけたお腹を隠しながら肉球型の有線式戦輪を振り回す。
「あ……攻撃届かない！」
「その攻撃範囲は見切りました！　痺れちゃってください！」
　リアの連続魔法弾攻撃！
　カーサは回避出来ない！
「まかしとき！　護れ、セリヌンティウスシールド！」
　カーサの目の前に、巨大化した亀の甲羅がバリアとなって光弾を弾き返した！
「間に合ってよかったわぁ！　うちも参戦するでー！」
　トフゥーまでもリアへ狙いを定めてしまった。
「酷いです……多勢に無勢じゃないですかぁ……！」
　１対３という窮地に心が折れそうになるリア。
　だが、彼女はそれでも逃げようとしない。
「でも、私は逃げません……！　申し訳ありませんが、ここは通行止めです。陛下のところへは行かせません……！」
　皇帝はやりすぎたのかもしれない。
　だが、純粋に人を好きになることの何がいけないのだろう？
　私は祝おうと、必死に一発芸を考えていたのに……！
「通りたかったら、私を倒してから行ってください！」
「よし、分かった！」
　伊予柑は即答した。
「押し通るよ……！」
　カーサが全身の魔力を高めだした。
「うちのメロスとセリヌンティウスに勝てるとでも思ってるん？」
　トフゥーは召喚亀２匹を撫でてニヤリと笑う。
　リアは答えた。
「……やっぱりこれは無理ですね、ごめんなさい！　だから乱暴はしないで。シュールストレミングあげますから！」
「「もう遅い！」」
　３人の光の魔法少女は一斉に攻撃！
「あれ？　こういう使い方もあるの……？　えっと、に、にゃんこランチャー、発射！」
　有線式戦輪から蒼い高出力ビームが放たれた！
　リアの全身が飲まれ、爆風で宙に浮き上がる！
　この隙をトフゥーは見逃さなかった。
「ミカンちゃん！　メロスに乗るんや！」
「ピュア☆ウンシュウミカンだよ！」
　伊予柑が訂正を求めるが、その言葉は聞き届けられなかった。
　やむなく彼女は亀の背に乗り、荒ぶるミカンのポーズのまま亀ごとリアに体当たり！
「せめて、あなただけでも……！」
　最後の力を振り絞り、リアは伊予柑に全弾発射！
　至近距離からの直撃、伊予柑の体が爆ぜる！
「ア、アッー！」
　でも凄く気持ち良さそうだ！
「私は逃げも隠れもしない、来るなら来いよ。むしろもっとやってください！　倍返しだ！　カラタチフラッシュ！」
　受けたダメージを魔力変換し倍増、一気に掌から放出！
　リアの魔法石に亀裂が入り、砕け散った！
「……ミカンの皮がなかったら死んでいたんだよ」
　伊予柑は胸元と局部をミカンの皮で覆い隠していた。
　首の皮一枚ならぬ、みかんの皮一枚で猛攻を凌いだのだ。
「うぅ……呪ってやります……！」
　伊予柑の腹に『不幸が大好き』という達筆なフォントタトゥーが浮かび上がった。
　これがリアの最後っ屁『Fuck off G-MEN（不幸自慢）』なのだ！
　リアの体が爆発して消失していく。
　これで１人、召喚された闇側の魔法少女を打破した。

　塔ヶ崎 璃亜：脱落

「いやー、強かったわー。ミカンちゃん、その刺青おもろいわー！」
　くすくすと笑うトフゥー。
　だが、すぐにあることに気が付いた。
「こた子ちゃんがおらへん！？　おーいどこやー？」
　トフゥーが呼びかけると、すぐにこた子が空中から姿を現す。
　その背中には漆黒の翼が生えていた。
「わらわはここじゃー、かなたーん！」
「なんや、どこいってたん？　心配したで？」
　こた子に手を振るトフゥー。だが、こた子は挨拶の代わりに機関銃の銃口を向けた。
「ちょっと闇側へ寝返ったのじゃー。ふっふー！ お饅頭ひとつでわらわは裏切るのよっ」
　こた子は饅頭を食べながら笑っていた。
　なんと、闇側の衛兵が食べていた饅頭の美味しさに心を奪われ、あっさり寝返ってしまったのだ！
　トフゥーの目が点になった。
「はぁっ？　なに裏切っとるんやー！？　みんな、はよ逃げて！　ここはうちが食い止めるで！」
「いぇーい、敵はまとめてみんなボロ雑巾になっちゃえ☆　爆発四散！　サヨナラ！」
　砲身が激しく回転し出すと、秒間70発もの漆黒の弾丸が地表に降り注ぐ！
　トフゥーはセリヌンティウスシールドを緊急展開、他の２人を逃すまで時間稼ぎをする他なかった。