寝子島書房『寝子島の不思議』　～海猫様と海鳴り～｜リアクション

寝子島書房『寝子島の不思議』　～海猫様と海鳴り～

【波間から現れたもの】

　深夜22時……。
　どこからともなく、飾り気のない提灯を遠目から見たような光が寝子島のほうからゆっくりとやってきた。
　人知れず現れたその光は、やがてエノコロ岬の方へ来ると、そのまま何かに導かれるようにすっと海中へと消えていった。
　しばらくして、突如としてエノコロ岬の最南端に付近の海にズゴゴゴゴという音が響いたと思うと、そこに四方50メートルほどの区画が現れる。
　そう、それはまさに伝承にあったものである。
《寝子島書房刊『寝子島の不思議』　～海猫様と海鳴りの章～》
　それらに導かれて集まるものや、偶然集ったものたちが、今この不思議を目の当たりにする。

（やれやれ今日の喧嘩もつまらんかった……ん？）
　近くの夜道を偶然歩いていた鳴神楓は、突如唸るような音を耳にし、そちらへと向かう。
（お、何だありゃ？海に穴が開いてんのか……？）
　海が割れ、海底があらわになっていく……。
　そこに小さなほこらがずらりと並べられている光景が現れる。
　また、岬の南端の海底部分の方に食い込む形で大きなほこらがちらりと見える。
（面白そうじゃん、気晴らしに寄り道してくか！）
　そう考えるとどこかうきうきしながら、下へと降りる道を探すのであった。

　こうして、ぽつぽつとこの現象に釣られるかのようにこの場所に人が集まり始める。
　今夜、ここで何が起きるのか……それはまだ誰も知らない。

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