プリントヘルin寝子島高校｜リアクション

プリントヘルin寝子島高校

転：混沌の印刷室

「なんだ、この状況は」
　インスピレーションを求めて行動していた旅鴉月詠は、窓から見える印刷室でのドタバタ騒動に目を留めた。そして、「こんな状況も使えるだろう」と素早くスケッチブックに（簡単にではあるが）様子を書き込んでおいた。
（まぁ、恐らく神魂の所為だろう）
　月詠は1つ頷くと、印刷室へと向った。

　印刷室は、混沌としていた。２台の印刷機はプリントを出し続け、プリントに手で触れた傍から効果を受けてしまい、遅々として調査は終らない。しかも津波といえるような勢いでプリントが廊下にまで流れ出し、最初に入ろうとした桜崎巴が足を滑らせる。同時に「猫さん……！」と言って外へ行ってしまう恵御納夏朝と、引きとめようとしてすっ転ぶ渡辺弥栄の姿があった。
「何だいありゃあ！　プリントは流れてくるわ、誰か走っていくわ……」
「野良猫のレポートを手にした浮月さんもあんな感じでした」
　倒れた弥栄の言葉に、巴達はなにかを覚える。状況は予想以上に深刻なようだ。巴はどうにか立ち上がるも、同時に一枚の紙を拾っていた。
「ん？　これは……？」
「うーんとねぇ。レシピに触るとお腹すいて動けなくなるんだよ～」
　へにゃっ、と笑った真辺伸幸の言葉に、巴は目をキラーン、と光らせる。彼女は何かを思いついたらしく、手にしていた紙でレシピを挟み、夏朝を追いかけ始めた。
「……あれ？　俺、何か言わなくちゃいけなかった気がする～」
　伸幸はへにゃ、と首を傾げながら彼女を見送った。

「へぇ、なかなか面白そうなことになってるじゃない？」
　そんな事を呟いた桃川圭花は御剣刀と共に弥栄を立たせて廊下に連れ出し、全員が廊下に出たところで一旦印刷室のドアを閉める。
「先輩、なんで鼻血を……」
「うーん、なんか印刷機から沢山プリントが出て、何故か女性の下着の広告が入っていたんだ。それに触れたら色々刺激的な光景が流れてこの様なんです」
　刀の問いにどこかしゅん、とした様子で答える弥栄。刀はそこから「やっぱりまた神魂のせいかよ」と溜め息混じりに呟いた。そして、未だ起動し続ける印刷機の音を聞きながらぽりぽり頭をかいた。

　椿美咲紀は何気なく１枚のプリントを拾っていた。それはラブコメディな漫画『彼は理系男子純情派』のワンシーンだった。舞台となる大学で主人公が友人に恋愛相談をしているシーンだった。因みにどっちもイケメンです。（多分重要）。
「今回の林間学校は近代的な建物に行くのね！　こんなに素敵なカッコイイお兄さん達が講師として来てくれるなんて！」
　一気に妄想しちゃう美咲紀だがそれがちょっと斜め上に行ってしまった。目に留まったイケメン２人の会話シーンが、妙にいちゃいちゃに見えてしまう。
（え？　この2人って怪しいぐらいに仲が良かったりしちゃうですか？　そんなパラダイスだなんて……。えっ？　私は物陰から見守るだけで幸せです……♪）
　顔を赤く染めて、もじもじしてしまう美咲紀。そして何気なく刀や修、言嗣といったハンサムな男子生徒、伸幸や弥栄といったかわいい男子生徒、岬といった綺麗な男子生徒と素敵な存在が目に入った。
（良く見たら、部屋の中にもカッコイイ人達が居ますですね！　うーん、美形な男性同士は頭の中で掛け算にしちゃうのです♪）
　なんかココに来て何かに目覚めようとしている美咲紀。というかそういう素質があったのか。どこかキュンキュンとしながらも彼女はうっとりと呟いた。
「いま何故かバタバタしてるこの混乱に立ち向かう頼れる２人が、お互いの安全を配慮しあって……ああん素敵なのですですぅ！　とってもとっても素敵すぎますぅ～！！」
　と一人真っ赤になって大興奮状態。その様子を不思議に思った浮月綾世も思わず別のシーンのプリントを拾っちゃったもんだからさぁ大変！　因みに今度は酔っ払った主人公を友人が担いでいるシーンだった。