プリントヘルin寝子島高校｜リアクション

プリントヘルin寝子島高校

（目を覚ませ俺！　現実を見るんだ！！）
　フルフルと身を震わせながら堪えようとするものの、愛らしい想い人の姿が脳裏から離れない。そんな時、彼の耳にこんな声が聞こえてきた。
『ねぇ、修君。臨海学校と林間学校はどっちが好き？　私は……修君と一緒に行きたいな♪』
「……はっ？！　そうだ！　しおりを作らなくてはいけないんだ！！」
　その声で我に帰った修は顔を上げ、現実に戻った！！　勢いよく立ち上がった修はぐっ、と拳を握り締める。その顔は今やるべき事を見定めた『軍師』の顔だった。
「わぁ！」「八神さん！？」
（ありがとう……。君のお陰だよっ）
　いきなり立ち上がった修にビックリしてしりもちをつく伸幸ときょとんとしてしまう時子と弥栄。修は決意も新たに状況を把握しようと全体を見渡した。
「十中八九神魂絡みだな。……印刷機をどう止めようか。電源を落としただけでは止まらない気がするが」
「それにしても、出続けてますね……。電源を抜くにしてもこれでは……」
　時子が溢れる紙を見つつ何気なく一枚拾うとそれはレシピだった。途端にお腹がすいてしまい、おまけに手にした紙がおいしそうなトマトに見えてくる。
「お腹がすいて力が出ないのよ～。なんだかみんなおいしそうなのよ～」
　しりもちをついた際にプリントに触れた伸幸もまた、レシピを手にしたらしく近くにあった紙を思わず口に入れようとする。
「ちょっとまて御巫！　真辺！　それは紙だ！！」
　どうにかして修が2人の手を掴んだり、肩を叩いたりして事なき終えた。そして、揺さぶられた際、落ちてきた紙を拾った伸幸は完全に我に帰る。その横では、急な空腹に焦りながら、時子が辺りを見渡していた。
「このままでは紙を食べてしまいそうです……。あ、渡辺先輩！　もしよろしかったらそちらのをいただけますか？」
「こ、これ？」
　鼻血をティッシュで抑えていた弥栄は、自分のポケットからまたたびメイトの箱が３，４個転がっているのに気付く。彼は何かを理解すると時子と伸幸に手渡す。
「先輩ありがとなのよ～」
「初めて食べますね……。ドキドキします……」
　２人はお礼を言ってまたたびメイトを口にする。その間にも修は弥栄から発見状況について話を聞いていた。
「うーん、浮月さんと一緒にプリントを取りに行ったらすでにこんな状態で……。そういえば、浮月さんは猫を探しに行ってしまいましたね」
「と言う事はそんな効果のあるプリントもあるって事か……。触っただけで精神攻撃。これは難敵だな」
　修は印刷機を軽く睨みながら、状況の打破に繋がる『何か』を推理し始めた。

「どうした。血が出ているぞ」
「やれやれ、私とした事が……。余所見を少ししていてね」
　久雨の言葉に苦笑する言嗣。人差し指にぷっくりと浮かび上がる赤い血に、久雨は小さく溜め息を付く。
「紙で切ったのか。手を貸せ、言嗣」
　そういうなり久雨は彼の手を握り、ぱくっ、と傷ついた人差し指を口に含んだ。まさかの行動に思わず見た冴来と佳奈は目を丸くし、言嗣もまた神妙な顔つきでその様子を見ていた。