プリントヘルin寝子島高校｜リアクション

プリントヘルin寝子島高校

起：しおりを作ろうと思ったが紙が無い

　夏休みもあと少しまで迫ったある日。寝子高の美術室では数名の学生が、美術担当の泉竜次と共に臨海学校と林間学校のしおりの表紙を考えていた。
手筈としては美術室で表紙を作り、その間にしおりの中身を印刷し、２年　５組である程度製本するという事になっている。

　――美術室
（臨海学校も、林間学校も楽しみだな）
　と、思いついた内容を下書きし始めたのは旅鴉月詠だった。彼女は僅かに瞳を細め、楽しげに表紙の絵について考える。
（この島らしいといえばサンマさんと猫か……）
　すらすらと描かれていく下書きに、竜次も眼鏡を正して口元を綻ばせる。
　１つは、パステルで麦藁帽子を被り、背中にリュックを背負った二足歩行のトラ猫が描かれている。どうやらトレッキングをしているらしい。もう１つは水彩で海を走るサンマさんと浮き輪とビート板を使い、バタ足で並んでいるトラ猫の姿だった。
「なかなか可愛くていいじゃないか」
「先生、少し相談が」
　絵を見て楽しげな様子の竜次に、月詠が声を掛ける。彼女は絵のインスピレーションを得たいと思い、外に行きたいと思ったのだ。
（絵は１つに決めるものではないし、それに……なんか面白そうな物がありそうな予感がする）
　話を聞いた竜次は楽しげに頷き、ぽん、と肩を叩く。
「インスピレーションは確かに大事だな。ま、遅くならないように」
「はい」
　月詠は頷くと一礼して美術室を後にした。

　――２年　５組の教室
　その頃、プリントを印刷しつつ準備を進めていたしおり製作班は、担当の先生によって説明を受けていた。しおりを製作するに当たっての作業工程と、役割分担などである。
「とりあえず、説明は以上だよ。何か質問はあるかな？」
　早川珪が黒板の前でそう問うと、集まった生徒たちは頷く。それを見、珪は準備を始めよう、と軽く手を叩いた。

　最初のうちは、順調だった。代わる代わる印刷の終ったプリントを運んで並べ、製本作業をし易いようにする。綾辻綾花の提案で臨海学校と林間学校、２つに分けて製本を行う事になっていた。

「しおり製作って見ているだけでも楽しいのよね」
　ころころと楽しげに笑う美崎岬に後木真央も「そうなのだ」と相槌を打つ。
「量はかなりあるみたいですが、皆で手分けして作れば大丈夫ですね」
　綾辻綾花もまた笑顔で頷き……チラリと珪を見た。彼女は、この図書教諭に思いを寄せているようで、今も目が合って微笑まれただけでちょっとドキドキしてしまう。
　因みに図書委員である綾花は作業中、珪に誘われて今回のしおり製作に参加していた。
「にゃっふっ！　ここでお手伝いして珪ちゃんセンセーにアピールすればもっと、もーっとおネコさまのご本を図書館に購入して貰えるかもしれないのだっ」
　気合い充分な顔の真央に岬と綾花が微笑んでいると、桃川圭花もまた眼鏡を正してやってくる。とある先生に用事があったので職員室へ向ったのだが、そこで珪とばったりあって現在に至る。
「思ったより人数少ないっぽいし、かなり頑張らなきゃいけないかもね？」
　くすり、と笑う彼女ではあったが「どうせ急ぎの用事でもないし、暇なのは事実だし」としおり製作を手伝ってくれるようだ。
「臨海学校も林間学校も楽しみだな。どんな事をやるんだろ？」
　今準備しているプリントを読めば内容は大体判るだろうけど、と思いつつも御剣刀もわくわくした様子であった。……が、よく見るとプリントはまだ揃っていない。
「そういえば、プリントはまだあるんだろう？」
　先に準備が整っていたプリントを見つつ、桜崎巴が首を傾げる。普堂しおりはうーん、と考え込んで口に出す。

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