らっかみさんらっかみさんお越しください！｜リアクション

らっかみさんらっかみさんお越しください！

●校庭

　多くのものが怪しいと踏んだ部屋から遠く離れた校庭にも、巻き込まれた者たちの姿があった。
　その逆に、校庭には悪霊たちの姿は少なかったが獅子島市子は禍々しい空気に当てられて、痛む頭を押さえた。
「大した理由もねーくせに荒らしやがって……！」
　あまりにも空気が淀んでおり市子は三つ編みを揺らしながら、悪態をついた。
　そうしていると、決まりが悪そうに声をかけられる。
「あー……ドモ。なんか気づいたら校庭？　に入ってるんだが……」
　大男、志波高久は――無意識だろう――腕をさすっていた。
　怯えてはいないところから、気味の悪さを拭い去ろうと自己防衛本能が働いているように市子には見えた。
「あたしも似たようなもんだ」
　独りごちているところを見られたのが気まずくて、市子は吐き捨てるように言う。
「ん、そっか」
　それに気を悪くしたようすもなく、高久は首に手を当てて薄く微笑んだ。
(にしても厄介だな……)
　悪霊が蔓延っているのはわかるのだが、何が原因なのかてんで市子にもわからないのだ。
　そうして頭を抱えている間に、悪霊どもは動き出した。
　どこから見つけてきたのか、三センチ大の石つぶてを市子目掛けて投げてきたのだ。
「ッん」
　あの程度ならば余裕で避けることはできるだろう。市子はそう思って軽く上体を逸らした。
　高久もそんな市子の余裕には気がついていただろう。
　しかし高久はわざわざ彼女の前に立って、石を蹴り飛ばす。
「ふぅ」
　彼はこれもまた無意識だろう。市子が怪我がなくてよかったというように口の端を上げた。
　その姿を見てズタ袋から市子はランプとマッチを取り出す。
　手慣れた動作でランプに火をつけ、それを持ってずかずかと幽霊に近づいていった。
　再び石を投げようとしているのも気にせずに、あろうことかランプを持っている手を霊の中に突っ込んだのだ。
(……安らかに眠りな)
　すると霊はふわりと煙のように空へと登っていく。
　市子としては極力関わりたくなかったが、高久がいる以上、そうも言っていられない。
　その煙を見送ってくるりと振り返ると、高久は驚いたようでじいっと市子を見つめている。
　説明するのも億劫な市子と彼の間になんとも言えない微妙な空気が流れる。
「やっと人間らしい人間に会えたわ」
　その空気を切り裂いたのは凛とした女性だった。
　艶やかな髪についた砂埃を払いながら、桃川圭花はふたりのもとに歩み寄ってくる。
　そうして合流した彼らは一度お互いの情報を交換し、整理していくことに。
「あいつらは――まぁ幽霊、悪霊だな」と市子。
「物を投げてきたり、攻撃的みたいだ」と高久。
「そういえば、北校舎の端っこが光ってたのよね」そして最後に圭花。
「なるほどな」
　彼らが目指すとこは決まった。
　そして、更に恵御納夏朝と合流することになる。