●おいでませ、らっかみさん。
「らっかみさん、らっかみさんお越しください」
昔から寝子島に住んでいる人ならば一度は耳にしたことがあるフレーズだろう。あるいは、口にしたこともあるかもしれない。
簡単に説明すると、日本の本土の方で『こっくりさん』や『エンジェルさん』の名前で親しまれている、少し魔術めいた遊びのことである。
五十音と数字、それから『はい』『いいえ』を記した紙の上をコインや鉛筆でなぞっていくことで占いをする遊びで、小中学校に在学中に一度は流行りが訪れるのではないだろうか。
夕日の差し込む寝子島高校の一室。
そこで、今日もその『遊び』が繰り広げられていた。
「ふふふ、今日こそ、今日こそ! 私らっかみサマと相まみえるのよ!」
遊びにしては真剣な面持ちをした彼女の名前は神辺 こゆみ(かんなべ・こゆみ)。
彼女は落神信仰を深く深く信仰しているということ以外はごく普通の少女である。ただ、そのたったひとつの部分が厄介なのだけれど。
「らっかみサマ。こゆみはらっかみサマに早くお会いしとうございます……」
胸の前で手を強く強く結んで、祈るように五十音の紙にすがった。
彼女はもれいびではないため、テオの存在には気がついていない。
そして、
野々 ののこの存在にも気がついていない。
そのためなんとかしてらっかみに会おうと、こうしてたびたび遊びのらっかみさんを行うのだ。
今回集まったメンバー(彼女が強引に集めたというべきか)は彼女を合わせて三人。
「お、おい、変なことにならないんだろうな?」
梅影 裕樹はよほど怖いのか、ずっと眼鏡を触っている。
「それほど怖がることはないだろう?」
そういう
佐藤 良守は涼しげな顔をして、足をわななかせている。
どちらも怖がりであることを人に伏せているのだが、それに気がついたこゆみはここぞとばかりに半ば脅して、協力してもらったのである。
「らっかみさん、らっかみさん。お越しくださいっ」
そうして、『らっかみさん』は開始した。
絵の鳥居にまっすぐ立てた鉛筆を三人はぎゅっと握り締め、祝詞を読み上げる。
するとカタカタと動き出した鉛筆。
誰かが動かしているのか、それとも本当にひとりでに動いているのかは定かではないが、動いている、ということはたしかに事実であった。
「らっかみさん、らっかみさん。あなたは本当にらっかみさんですか?」
おそるおそる、けれどこゆみはさっそく核心をついた。
鉛筆はしばらく鳥居の上でぐずぐずとしてから、何度も何度も『はい』の上をなぞった。
「やったわ……!」
思わず手を離しそうになるこゆみを「お、おい」と裕樹は叱咤した。
「あら、ごめんなさい」
途中で手を放してしまうと、らっかみさんに呪われると言われているのだ。
気を引き締めなおして、
「あなたの名前を教えてくださらない?」
とこゆみは尋ねる。
鉛筆は思案した後、名前を示そうと動き出す。
その途中。
急に鳥居が光りだした。
「え?」
なんだろう――もしかしてらっかみサマがいらっしゃるの?
こゆみが期待に満ちた面差しで待機していると「あ、危ないっ!」良守の悲鳴混じりの叫び声が。
「へ?」
こゆみは喜びのあまり鉛筆から手を放してしまったのだ。
「そっちじゃない!」
けれど裕樹はそれどころではないという。
その声に従い振り返ると、黒い影が椅子を持ち上げているところだった。
黒い影にぽっかりと開いたふたつの孔が、すぅっと細まる。
笑ったのだ。この、悪霊まがいのなにかは笑っているのだ。
そして、影はみるみるうちに教室中に広がっていった。
●律儀ならっかみさん
混乱のさなか、忘れ去られた鉛筆。
けれど鉛筆は、まだ立っていた。
そして質問に答えるべくひとりでに動き出す。
示した文字は『な』と『し』。
梅影 裕樹様、佐藤 良守様、ガイドに登場してくださいましてありがとうございます。
もしご参加いただけなかった場合は、描写はありませんが、奮闘して頂いたか、
逃げたか、気絶していたか……その辺りのお好きなモノと解釈していただけると幸いです
今回は、特に丁寧にマスターコメントを読んでいただくことを推奨いたします。
サンプルアクションも、是非。
相談推奨、とまでは言いませんが、コメント欄の活用を推奨致します。
*概要*
神辺 こゆみが『らっかみ』と呼びだそうとしたのが事の始まりです。
状況を簡単に説明すると以下のようになります。
・『らっかみさん』で自称らっかみを呼ぶことに成功。
・らっかみさんと一緒に悪霊(?)も呼び出してしまった。
・悪霊が寝子高を乗っ取ってしまいました。
【らっかみさんについて】
・ガイド本文にもありますが、いわゆるこっくりさんと同じものです。
・筋肉の反応であったり、低級霊が降りてきているだけだという説がありますが、今回は『らっかみさんを自称するナニカ』が降りてきています。
【悪霊の世界について】
・参加した時点で、皆さんは悪霊の支配した寝子高にいます。
・『もれいび』『ひと』『寝子高生』『社会人』問わず、霊感が強い、霊に好かれやすい(運が悪い)等の理由で巻き込まれる可能性があります。
・この世界は悪霊に乗っ取られた時点で、寝子高とは似て非なるものです。
・神辺 こゆみたちが居る教室は北校舎の三階の端にあり、遠くから見るとそこはぼんやりと光って見えます。
以上が物語の概要です。
以下PL情報です。
不足している情報はらっかみさんに尋ねるか、自分達で推理してみてください。
【解決方法】
・らっかみさん(?)にお帰り頂くと、すべての影も消え、元の世界に帰ることができます。
『らっかみらっかみさん、ありがとうございました。らっかみさんどうかお帰りください』
と言って、
『はい』
という返事を貰えれば、帰ってくれます。
『いいえ』と返事が来た場合は、帰ってくれません。
・それ以外にも、解決方法はあります。
【自称らっかみさんについて】
・質問すると、鉛筆が動いて答えてくれます。
・ただし紙には「゛」「゜」や「っ」を含めた小文字はないので、各自で正しい言葉に変換する必要があります。
・らっかみさんは、解決する方法も含め、わかる範囲のことはすべての質問に答えてくれます。
(好きな人のことやテストに出る問題なども、なんでも分かる範囲で答えてくれます)
・交霊の途中で鉛筆を手放すと、らっかみさんに憑かれるといいますが、らっかみさんではなく、悪霊に憑かれます。
・らっかみさんにも目的がありますので簡単には帰ってくれません。
【悪霊について】
・寝子高の敷地内に出没しています。
・読んで字の如く、ぱっと見『影』のようです。
・らっかみさんを呼び出す際に、一緒についてきてしまった悪霊です。
・基本はものを投げてきたりという方法で攻撃をしてきますが、らっかみさんと一度でも交信をすると、悪霊じゃ取り憑こうと襲いかかってきます。
・悪霊に憑かれると、体を取られます。元の世界に帰るか、悪霊を第三者に追い払ってもらわないと元には戻りません。
・強い光を当てる、除霊行為を行うことによって、彼らは消えます。ただし、影の性質として光が濃くなれば影も濃くなるということがありますので、ご注意を。
・それ以外の特徴として、神辺 こゆみたちの部屋に近づくほど多く、強く、遠ざかるほど少なく弱くなります。
・彼らは触れるものを選択できます。壁をすり抜けることも、物を投げることもできるということです。
*アクション*
・スタート地点は寝子高内ならどこでも構いません。
指定がない場合は校庭・どこかの教室・部室の中からランダムに決定致します。
・『自称らっかみさん』に対する質問は誤字脱字を除いてアクションのものをそのまま使います。極力具体的に書いてください。
※コメント欄で事前に相談しておくと、文字数の削減・被りを防ぐことが出来ます。
*NPC*
◯神辺 こゆみ
今回の事件の発端となった寝子高一年四組の生徒。桜花寮住まい。
落神信仰に強いあこがれのようなものを抱いていて、落神神社の前を通るときは必ず手を合わせる。
落神のことになると、眼の色が変わる。
それ以外は実に平凡で、これといった特徴もない女の子。
それ以外のNPCは元の世界に居ますので、基本的に登場致しません。