歴史の旅人「本能寺の変」｜リアクション

歴史の旅人「本能寺の変」

　chapter.12　復　

　気がつけば一同は、図書館の出入り口にいた。
「戻った……のか？」
　修が辺りを見回し、そう呟く。
　結局、信長と光秀が対面を果たした後どうなったのか、確認が出来ないまま戻ってきてしまった。
　奇跡は起こせたのだろうか。修が思いを馳せるそばでは、深雪が一目散に図書館に入り、歴史書を借りていた。
　それを持って戻ってくると、修の横へと座りページをめくる。
　——本能寺の変にて、織田信長は明智光秀の謀反に遭い自害した。
　書かれていたのは、彼らがよく知る本能寺の変と何ら変わりのないものだった。
「……実際の歴史は変わらず、か。もっとも、仮にあっちではっきりと歴史を変えることが出来たとしても、影響はこっちに及ばなさそうだな」
　修が考察すると、深雪は少しだけ残念そうな、それでもどこかほっとしたような顔を浮かべ彼に言った。
「まあ、戻ってこれて何よりだろ」
「そうだな」
　ふたりが、静かに笑い合った。

　彼らの近くでは、荒太郎と瓢がきょろきょろと何かを探す素振りを見せていた。
「あれー、骨くん、もしかして……」
「雨崎はん、どうやらあっしらは似たことを考えていたようだねぃ」
　そう、信長をこちら側に連れてこようとしていたのは何も瓢だけではなかった。荒太郎もまた、現代を信長が生きたならばどんな人間になったかという興味を持っていたのだ。
　しかし、彼らがあの空間から抜ける直前まで掴んでいた腕の主は、見当たらない。
「やっぱり、無理だったのかねぇ」
「残念でがんすー」
　がっくりと項垂れる荒太郎を横目に、瓢は「ま、仕方ないかねぇ」と早くも気持ちを切り替え、まだ暑さの残る夏の空の下へと歩き出していった。

　そこで、彼はひとりの男とすれ違った。歳は、10代後半ほどだろうか。
　男は本を返却しに来たのか、真っ直ぐカウンターに向かうと受付の女性といくつかの言葉を交わし、本を置くと図書館を後にする。そこで彼の携帯が着信を告げ、男は通話ボタンを押して声を上げた。
「もしもし、斎藤？　え、今度俺に会わせたい人がいる……？」
　そのまま、電話の向こうの相手と話をしながら去っていく男。
　修はその声がなんだか聞き覚えのあるもののような気がして、視線を向けた。しかしそこに男の姿は、もうなかった。

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あとがき

担当マスター：萩栄一
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萩栄一です。
今回のシナリオに参加していただき、ありがとうございました。
「シリアスかコメディか、集まったアクションで決めたいです」的なことをマスコメに書いた結果、
シリアス8割、コメディ2割くらいの内容となりました。
やはり戦闘が起きたり作戦が方々で練られていたりするとそういった方向に傾きやすいのかな、と思いました。

上記の要素が含まれたことから、今回は普段よりやや判定を厳しめにさせていただきました。
大体の判定理由については、個別にて記させていただきましたのでそちらを読んでいただければと思います。

全体向けに一点書かせていただくとすれば、大まかな判定基準は「その言動が流れの中で自然かどうか」です。
（多少不自然でも状況などにより成功したりすることもありますので例外もいくつかあります）
たとえば、今回ですと信長に対し
「おー、ノブちゃん！　ちょっと今度ゴルフ行こうよ！」と話しかけるアクションがあったとします。
（そういったアクションはもちろんですけど来てません。一例です。笑）
この場合、「ゴルフ行こうよ！」という誘いはまず成功しません。
なぜなら、謀反を起こされ窮地に陥っているという時に、
ゴルフの誘いを呑気に受けるのは明らかに流れ上不自然だからです。
そもそも戦国時代の人間にゴルフという単語が通じないと思いますけれども。笑
厳密に言えばノブちゃん呼ばわりもかなり無礼で切腹ものですが、
そのあたりはキャラクター性の問題などもあるので不自然の範疇からは外しています。

長々と書いてしまいましたが、普段の、そこまでシリアスじゃないお話の時はもっと判定はゆるいですし、
判定が厳しい場合も極力アクションの内容は汲み取ろうと思いつつ執筆させていただいているつもりです。
ということだけご理解いただければと思います。

あ、あともうひとつ。
今回登場する武将や建物、時代背景などは私なりの見方で解釈、設定させていただいた部分もありますので、
資料などによっては異なった解釈なども存在するかと思います。
が、そのあたりも「こういう解釈もあるよね」と大らかな心で楽しんでいただけたらと思います。

それでは、また次回のシナリオでお会いできることを楽しみにしています。
長文に付き合っていただき、ありがとうございました。

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