もうすぐ8月に入ろうかという、夏の日。
寝子島図書館は、心なしかいつもより賑わっているように見えます。
暑さのあまり涼みに来た人もいるからでしょうか。
そんな中、30歳前後と見られるひとりの女性がカウンターで一冊の本を受け取り出口へ向かっていました。
借りた本は表紙からするに、日本の歴史書のようです。
女性は家まで待ちきれない様子で本を開くと、図書館の出口付近でぱらぱらとページをめくり始めました。
と。女性は一瞬苦々しい表情を浮かべました。何事でしょうか。
八神 修は休日を利用し、勉強に励むため図書館にたまたま足を運んでいました。
彼が女性とすれ違ったのは、女性がそんな表情をしている時でした。
気になった修がちらりと目を向けると、女性の指先から血がしたたっています。
紙の端で切ってしまったのでしょう。先ほどの女性の表情は、これが原因のようです。
「大丈夫ですか?」
反射的に、修は女性に声をかけ、ティッシュを差し出していました。
女性はすまなそうな顔をしつつも頭を下げ受け取ると、持っていた本に視線を落とします。
どうやら血の滴が、本に垂れてしまっているようでした。
「あ、本汚しちゃった……」
女性が言い、修が目線を下におろした時に、それは起こりました。
「っ!?」
一瞬、目がくらむような感覚。そして辺りがまばゆい光に包まれます。
反射的に目を瞑ったふたりがおそるおそる目を開いた時、そこは図書館ではありませんでした。
「……な、なに、ここ……」
彼女の眼前にあったのは、大きなお寺でした。それも、見覚えのある。
そして修と女性は、洋服ではなくずしりと重い甲冑を身につけていました。女性は呟きます。
「これ、まるで……」
そう、そのお寺は彼女が今の今まで見ていた本のページに載っていたあるお寺そのものだったのです。
さほど遠くないであろうところから、馬が駆ける音が聞こえてきました。
修が辺りを見回すと、自分と同じような表情で辺りをきょろきょろと見回している人たちが数十人ほど。
彼らも自分と同じなのだろうか? そもそも一体ここはどこで、なんなのか?
なぜ突然このような場所に?
修の推理を遮るかのように、突如辺りに大きな声が響きました。
「敵は、本能寺にあり!!」
その言葉は、歴史にさほど詳しくないものでも一度は耳にしたことがあるでしょう。
戦国武将、
明智光秀が言った有名なセリフです。
そしてそれはつまり、今目の前にあるこのお寺が本能寺だということを示しているのです。
その場にいた何名かが、気づきました。これは、本能寺の変だと。
「ということは、あの声がした方にいるのが明智光秀で、この寺の中にいるのが、
織田信長……!?」
直後、カチャカチャと甲冑の擦れ合う音が聞こえてきました。
予想が正しければ、明智軍がここに迫っているということ。
女性を含めた一行は、自分たちの格好を再度確認しました。
よく見ると、甲冑の種類はふたつに分けられるようです。
ひとつは、
桔梗の家紋が入った甲冑。もうひとつは、
木瓜紋(もっこうもん)です。
ここで、
八神 修がその観察眼とこれまで数々の事件に関わってきた経験則から紡がれた推論を告げました。
「なるほど、これは明智家の家紋と織田家の家紋……つまり、俺たちはこの時代の当事者になってしまった、といったところか」
その言葉を聞き、これはまずい、と誰もが思いました。
なぜなら、強制的に分けられたふたつの家紋を携えているということは、
否応なしにこの争いに巻き込まれてしまうということ。
目の前には本能寺の門。そして後方からは甲冑の音。
——さて、あなたの取る行動は?
こんにちは、マスターの萩栄一です。
今回のシナリオは、七夕キャンペーンで当選した、八神 修様の書き込みを元に作成されたガイドです。
舞台は戦国時代、本能寺の変の一幕です。
たまたま図書館の出入り口付近にいあわせた人たちが、戦国時代に酷似した異空間へと強制的に移動させられました。
おそらく誰かしらのろっこんが原因と思われますが、詳細をキャラクターたちは知りません。
*以下はプレイヤー情報です。キャラクター自身は以下の内容を知りません。
異空間から元の場所へ戻る方法ですが、時間が経てば強制的に戻るようになっています。
今回の滞在時間は、およそ1時間ほどです。
その1時間の間で、巻き込まれたキャラクターたちは主にふたつの選択肢を迫られます。
1・明智軍について信長を討ち取る
2・織田軍について明智軍から信長を逃がす
選んだ選択肢、その結果の優劣により結末は変わります(お好きな方を選んでいただいて大丈夫です)。
なお、この空間で負った傷などは元の世界に戻ってもそのままですので、お気を付けください。
*アクション投稿時の注意
異空間に飛ばされた時点で、すべてのキャラクターは明智軍、織田軍どちらかの軍に強制的に分けられています。
アクション投稿時には「明智軍」「織田軍」どちらの甲冑を装備しているかを必ずお書きください。
記入がない場合、マスター側で適宜処理させていただきます。
なお第3の軍勢として〜などの行動も取ることも一応可能ですが、
異空間に飛ばされた時点で明智軍、織田軍どちらかの甲冑を装備してしまっている上、
時間が1時間しかないため難易度は相当高いと思われます。
*本能寺の構造、状況についてです。こちらもプレイヤー情報となります。
・表門・裏門があり、キャラたちは全員ごちゃまぜ状態で表門に飛ばされていてそこからスタート
・明智軍は1万ほどの軍勢で表門へ接近中
・寺周りは堀があり、門以外からの侵入は困難(ただし水堀ではなく空堀)
・敷地内の半分ほどは庭園が占めており、本堂も正門から目視可能な距離にある
・ただし本堂前は織田軍側近が守りを固めているため、正面突破はかなりの時間と労力を使う
・本堂以外の建物(脇寺)から廊下を伝って本堂に行くことは可能だがやや遠回り
・廊下伝いに本堂へ行く場合、最低でも2つの脇寺を通過する必要があり、うちひとつには信長の小姓森蘭丸がいる
今回、コメディかシリアスかは特に決めていません。
集まったアクションがどちらに寄っているかで決めたいと思います。
それでは皆さんの渾身のアクションをお待ちしております。