マダム千代子と永遠のブルー｜リアクション

マダム千代子と永遠のブルー

●落神神社

　一行は落神神社に至る山道を登っていた。
　御剣刀の提案で、お参りする事になったのだ。

「大丈夫っすか？　おんぶとかします？」
　新江天懸は慣れない山道を登る千代子に、手を貸した。
　天懸の大きな掌を握り返す手は、案外力強い。
「ありがとう、天懸くん。いい腹ごなしになりそうですわね」
　後木真央も千代子の背中を押した。
「ちよちゃん、ガンバなのだ！　でも辛くなったら遠慮なく言って欲しいのだ」
「真央ちゃんも、ありがとう」

　どうして落神神社なのよ、と尋ねる弘明寺能美子に刀は答えた。
「三下さんの姿は、間違いなく神魂の影響だ。なら皆で、そのお礼をしておくべきだろう？」
　とは言え、いざ辿り着くとアホの子の能天気な顔を思い出して、和菓子を供えただけだったが。

（だって、ぶっちゃけ神様ののこだし、手を合わせる気にならない！）
　だそうである。
　例え神様でも、日頃の行いは大切だ。

　別れ際、刀は握手と共に千代子に、一本の青い薔薇を手渡した。
「まあ、ブルーローズ。大変でしたでしょう？」
　目を見張る千代子に、刀は照れくさそうに後ろ頭を掻いた。
　青い薔薇はレアで探すのに骨が折れる上、それなりに高価だったのだ。
「お花は大好きよ、嬉しいわ」
「花言葉は『奇跡　神の祝福　夢叶う』だそうです。
　柄じゃないけどさ、知っている人がいなくなってしまうのは辛いから」
「ありがとう……いい香りですわ」
「またきっとお会いしましょう」
「また一緒に、お揃いの鞄を持ってお出かけしましょうね」
「ええ、必ず」
　千代子達と笑顔で別れた刀と能美子は、再び参道商店街に戻った。

「あ～、動き回ったら腹減ったな。弘明寺、奢るから何か食いに行かない？」
「まだ食べるの！？」
「いいだろう、健康な証拠さ」
　茶目っ気を見せる刀に、能美子も小さく微笑んだ。