厳正な抽選の結果、貴方様がご当選されました。｜リアクション

厳正な抽選の結果、貴方様がご当選されました。

●お食事はおひとりさま～歪

　鮮やかなビタミンカラーのシャツに、肌触りの滑らかな紫色のストライプのスーツ。
　お気に入りを着こなして、エレノア・エインズワースは目についたものに手を伸ばす。
　シェフのオススメという文字には目もくれず、なんとなく、目に留まったものを口に運んだ。
　イチャイチャするカップルも多いが、そんなものに、ウニのソースの粒ほどの興味もなかった。
　御剣刀と目があっても、何を思うでもなく、目をそらした。
　食事を味わうだけならばひとりで十分。
「……蕎麦がないのが残念ですね」
　彼女はひとり黙々と、けれどしっかりと食事を楽しんでいた。

　彼女も含め、意外とひとりで楽しむものも多かった。
　ロベルト・エメリヤノフもおひとりさま。
（こんなしっかりしたレストランで食べるのはいつぶりだろう）
　そんな風にまわりをのんびりと観察しながらロベルトはイカ素麺をすすった。
　するりと、冷たいなめっとした感触が喉を滑っていく。
　ぼんやりとしながら食べてもなかなか美味しかった。
　何故そこまで観察の方に力を注いでいるかといえば（美少年も居るといいなあ）という邪な気持ちが理由で。
　しかしそんなロベルトの考えは誰に気づかれるでもない。
　これ幸いと、ロベルトはじぃっとまわりを見つめているのであった。
（うーん、彼は美形だけど、少年ではないよな）
　そして会場にいる、（彼からすれば）残念な男子たちを見てひっそりとため息をついた。
（わ、少年、見ーつけた）
　さらさらとした髪。着こなしきれていないジャケット。
　まごうことなき少年――甘喜好。
（……でも残念）
『美』少年ではなかった。
（今年のおみくじは超吉だったのに、全然ついてないや）
　さっきよりも大胆にため息をついて、トマトのスープで喉を洗う。
　それから鱧の天ぷらに齧り付き、さくさくとお菓子のような食感を楽しんだ。
　さくさく。
　その音に合わせるように綺麗な男が近づいてくる。
　紫色のスーツの――背は高いが線の細さから言えばまだ少年と思しき、人。
　そして彼はひとりだった。
（やっぱり、ついてるのかな？）
　思わず頬にくしゃりと歪んだ笑みが浮かぶ。
　ロベルトは海老を飲み込んでから、ゆっくり、ゆっくりと少年に近づいて行った。