厳正な抽選の結果、貴方様がご当選されました。｜リアクション

厳正な抽選の結果、貴方様がご当選されました。

●お食事はおひとりさま

　太陽の光をいっぱい受けているのだろう。
　そんな艶やかな金髪をなびかせ、マリベル・ロイスは颯爽とレストランに現れた。
　白から薄紫へと変わっていくお上品なワンピース。
　そこへ薄緑のショールを羽織って、胸には輝くエメラルド。
　さながら一輪の菖蒲のようだった。
　たおやかで、厳かで。
　この世界にしっかりと溶け込んで、マリベルは内心こう思っていた。
（し、しまったー！　ただでご飯食べれることにはしゃいでてお連れのお客様の文字ぜんぜんみえてなかったー!?）
　内心では結構焦っていた。
（せっかく、セレブっぽく見えても、ぼっちなんは隠せへん！）
　カッと目を見開いて、まわりを凝視する。
「柳霞さん、食べきれなかったらおっしゃってくださいね」　
「ありがとう。景貴さんも、私の事気にせずに食べていいんだからね？」
「頂いてますよ」
　お互いに気を配り合うカップル。
「刀君、さっきから肉系ばかりだけど、ちゃんと野菜も摂らないと」
「ありがと……って、げっ野菜が山盛り！」
「サラダも食べてね」
　美人の世話やき女房と元気な彼氏。
　見ているだけで頬が熱を持つというものだ。
　マリベルは目をサッと逸らして、覚悟を決めた。
（いや、もう、こうなったら、『相手が急病でこれなくなったプチセレブ』を気取って食事を楽しむんや！）
　そうやわ、そうしよ。
（今日のウチはちょっとリッチなお嬢様って設定や！）
　いやママンが張り切ってアクセサリーを貸してくれたししかたなくな。と自分で自分に補足を入れる。
（……虚しさなんかにうちは負けへん！）
　マリベルを送り出す母親の笑顔を思い出して、活を入れる。
「さ、なにから食べようかな」
　セレブはやっぱりデザートから攻めるんかなあ？
　マリベルは自分の思うセレブ像を実践するべく、一直線。
　それから、後で、たこ焼き！　ならぬたこの鉄板焼きを食べて――。
（はぁ。これが漫画ならイケメンとぶつかってキャーって素敵な出会いがあるんやけどなあ）
　一瞬よぎる甘い期待も放り出して、
「よし、ジュース類を貰うで！」
　マリベルはジュースを取りに向かった。