厳正な抽選の結果、貴方様がご当選されました。｜リアクション

厳正な抽選の結果、貴方様がご当選されました。

●お食事の振る舞いを

　お皿にこんもりと盛られた野菜を見て、御剣刀はげんなりする。
「バランスが大事だから、ね？」
　無意識なのだろう、小首を傾げる橘千歳は、わざとらしくするそれとは違う。
　木漏れ日が眩しいとでもいうように、刀は目を細めた。
「ああ」
　そんな彼女に「野菜なんて嫌だ！」と抗議することは、とてもじゃないが刀にはできそうにない。
　嫌いとは言わないが、せっかくだから肉を食べたい男子高校生。
　不承不承、野菜を口に放り込む、いや詰め込んだ。
「そんなに入れたらダメよ。ちゃんと噛まなきゃ」
　これが母親であれば、はいはい、とでも言って、その口うるささなど気にも留めないのだが。
　千歳の話は、どうしても聞き流せない。
「わくあ゛あっよ」
「返事は、飲み込んでからでいいから……」
　そう思って返事をしても、千歳の小言は尽きず、刀は苦笑しながら頷いた。
　それから野菜を口の中に、控えめに詰め込んで、千歳の横顔を眺めた。
（千歳ってこういう場所での食べ方も様になってるよな）
　細かく、けれど汚らしくない程度に切って、その小さな口に運んでいく。
　大口を開けているわけではないのに、食べこぼすことなんて絶対ない。
　きれいな食べ方だった。
（俺も見習わないと……）
　そう思いながら、ふと、さきほどの千歳の言葉を思い出す。
　彼女はフォアグラが苦手だと言っていた。
　作り方が残酷だし、食感が好きではないとも。
（フォアグラの味や食感ってどうなんだろう）
　そもそもフォアグラってなんだっけ？　鴨の……なにかだたとは思うのだけれど。
　いや、そんなことはどうだっていい。
（俺は今、千歳と一緒にいるんだ）
　いつもとは違い、着飾った――といっても華美な装飾なんてしていないけれど――彼女が、いつも通りに気を配ってくれる。
（千歳に恥をかかせないよう食べ方とか振舞いに、気をつけようっ）
「刀君、ほっぺたに、ドレッシングが付いてるよ」
　覚悟を決めた側から、繊細なハンカチで、千歳が刀の頬を拭うことになった。