奴隷戦線異常有り｜リアクション

奴隷戦線異常有り

●●●皆は一人の為に●●●
　彩斗に振り下ろされた棍棒は、彩斗に当たることはなかった。
　棍棒自体が横に逸れ、地面を殴るゴブリン。

「陸上部の脚力舐めんなし！」

　棍棒の軌道を逸らしたのは荷馬車の上にいた真央であった。
　会心の一撃を捨て、彩斗に攻撃をしているゴブリンにタックルを仕掛けたのだ。

「いっつも役に立たないとか汚名挽回なのだ！」

　言葉は間違っていても、行動は間違わぬ真央。そして、そのまま標的を自分に集める。
　目を瞑ったままの彩斗は恐る恐る目を開け、状況を理解する。

「おおー、真央ちゃん。助かったよぉ。あやとは大丈夫ー？」

　陽太は真央に礼を、彩斗には安心を言葉にする。
　そして、陽太の声で彩斗も胸をなで下ろした。

「よかった。よーたに何かあったら、俺…」
「わー！　ちょ、ちょっとー！」

　お互いの無事を確認していた陽太と彩斗。
　数体のゴブリンに追われる真央が慌てた声を叫ぶ。
　足は真央の方が早いものの、ゴブリン集団の中を駆け抜けたのは多少無理があったようだ。
　ゴブリン達の攻撃を受けまいと、かわしつつ走るのは普段の実力通りには行かない。

「うふふ。真打ち登場、かしら？」

　一体のゴブリンの頭が鷲掴みにされ、ゴブリンが振り返る。
　そこには良い笑顔の蛇那伊がいた。
　掴まれたことに腹を立てたのか、蛇那伊に向かって叫ぶゴブリン。
　それに呼応するように、蛇那伊に気が付き、攻撃対象を変えるゴブリン集団。

「アタシも舐めてもらっちゃ、困るのよね！」

　鷲掴みにした頭をそのままに、逆手の指をじゃんけんのチョキのように作る。
　そして、躊躇無くゴブリンの両目に指を刺し込む。
　先ほどの叫びとはうってかわって悲鳴のように鳴くゴブリン。
　訳も分からず棍棒を振り回し、蛇那伊を攻撃対象にしたゴブリンに攻撃をしてしまう。
　攻撃されたゴブリンは敵と見なしたのか、目を潰された同胞に攻撃をする。

「後木さんと尾鎌さんの頑張りは、無駄にできません…！」

　立ち直った彩斗は別のゴブリンに後ろから近づき、制服の上着をかぶせて視界を奪う。
　別のゴブリンには陽太が一撃を入れ、攻撃対象を分散させる。
　奇しくもこの付近のゴブリンの数と同等の人間が存在する事となった。

「良い感じね。これなら、一体ずつ潰しましょうか」

　蛇那伊の一言で真央・陽太・彩斗はゴブリンを引きつけ、攻撃対象が移らない様に拡散する。
　蛇那伊もゴブリン一体と対峙する。

「さぁ…どこからでもかかってらっしゃい」

　観客の非難の声は高まる一方であった。

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