奴隷戦線異常有り｜リアクション

奴隷戦線異常有り

●●●正面突撃！●●●
「遅いぞ！」

　叫びながらゴブリンに地面を叩かせるザ・ストレイト。
　反撃とでも言うように、手に持つ盾を力の限りゴブリンの顔面に叩きつける。
　ゴブリンの粘着音のする呻きが聞こえるが、後ろのゴブリン達には関係がないとばかりに進行を緩めない。

「戦いでよそ見は厳禁だ」

　ザ・ストレイトをねらうゴブリンの一匹を横から剣で刺す刀。
　しかし、想像以上にゴブリンの頭部が堅かったためか、ボロボロの剣は一撃で使い物にならなくなる。

「っ…！　もう少し耐えてくれると思ったが」

　手にした剣が長くは持たないことを予想はしていたが、一撃で壊れるとは思っていなかった刀。
　ゆっくりと刀を見るゴブリンだが、他のゴブリンに攻撃される。その間にうまく逃げられた。

「どうだ！　殴るばかりが戦いじゃないぞ！」

　ザ・ストレイトが叩きつけた盾も一撃で砕けてはいたが、それを素早く集め、後ろのゴブリンに散布させた。
　最初の攻撃がある程度うまくいった二人は、集団の分離を計るために左右に散り、後方に誘導する。

「殴るばかりが戦いじゃない…よぉく言った！　俺がそれを分からせてやろう！」

　後方から上がってきたのは拳に剣の破片を着けているフォモナンデスだ。
　元ボクサーである彼にとってはこの上ない武器であろう。

「さぁ、殺し合おうぜぇ！？」

　フォモナンデスはゴブリンのターゲットをうまく引き、一対一の状況を作ることに成功する。
　荒い息をし、振り上げた棍棒を横薙ぎにするゴブリン。
　ステップを踏み、ギリギリの所で避けるフォモナンデス。

「はっ。力自慢はスラム時代にもいたんでなぁ？」

　一撃の重いゴブリンの攻撃は反動も大きく、隙が大きい。
　それを分かっていたフォモナンデスはすかさず反撃に移る。
　顔面を打ち、そしてこすり、目や口自体にダメージを追わせる。
　たまらず鳴くゴブリンだが、空いた手でフォモナンデスを掴もうとする。
　ブロッキングしようとしたフォモナンデスだが、うまく芯をずらすことができず、捕まれてしまう。

「ち…っ。俺としたことが…」

　武具の破片を麻布マントに付け、防具代わりとしていたが、物ともせず力を込めるゴブリン。
　万事窮すと思われたところにゴブリンの腕が折れる。
　突然のことだったからか、一瞬遅れて叫び、倒れるゴブリン。

「危なかったな。大丈夫か？」

　手を差し出しながら刀はフォモナンデスに尋ねた。
　彼のろっこん【加速】は自身の行動を早めることができる。
　その能力でフォモナンデスを助けたのだ。

「はっ。んな若造に助けられるたぁ、焼きが回ったか」

　礼を言うでもなく、差し出された手を無視して立ち上がるフォモナンデス。
　おもむろにゴブリンの頭に近づき、首を基点に180度回す。

「それだけ動けるなら大丈夫か」

　ゴブリンの棍棒を拾って重さを確かめ、次の標的を定める刀。
　満足そうに頷くと、フォモナンデスに向けて言う。

「俺は行くけど、気をつけなよ」
「次はあんなヘマしねぇよ」

　死んだ人間がゼロにも関わらず、一体のゴブリンがやられた。
　その事実に会場がざわついた。

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