懐かしんでの大宴会！　４月生まれを祝おう！｜リアクション

懐かしんでの大宴会！　４月生まれを祝おう！

【世界が刮目した日、日本が刮目された日、寝子島は？　今日も平和です】

　さて、こちらはステージに近い一角。
「四月！それはたー坊バースデー！！　ちょっとだけ俺と同じ年うふふ！　世間に疎いたー坊でもこれならビビっとくるだろ！　ってことで東京で行われた世界的スポーツ大会の選手団衣装を！　そしてこっそり俺もそれでたー坊とおそろテヘペロ！」
「……誰に、言って、るんだ？」
「アイラービュー世界の国からこんにちは、俺にもこんにちは！　ター坊にもこんにちはっ！　ってことで世界中で繋がってるラブ＆ピースへだ！」
「……」
「祝うぜー超祝うぜー！」
　ハイテンションな方が志波武道、ゆっくりとしゃべっているのが志波拓郎。
　何を隠そうこの二人は兄弟である。弟の拓郎の方が四月一四日生まれで誕生日にあたる。
　さて、この兄弟が来ているその大会での日本選手団のレプリカである赤いブレザー。
　ぱっと見た感じとても人目を引き、当時もよくも悪くも話題に上がったようだ。
　ちょっと詳しく説明すると、ジャケットは金ボタンの赤のブレザー、パンツとスカートと靴は白、ネクタイは紺に赤のストライプ、白いハットを頭にかぶり、爽やかな印象を受ける。
　胸に輝く日の丸はどこまでも誇らしい。
　そんな衣装に包まれた二人は、尚更今日という日の中で目立つ存在だ。
「たー坊や四月生まれでお祝い対象な人達をおにーちゃん写メっちゃうぞー！　照れても恥ずかしがっても逃げても追いかけてとっちゃうぞー！」
「……祝われるのは、嬉しい、……けど、もう少し……普通に、祝って……」
　バシャバシャと写真を撮る武道に、照れたのか恥ずかしいのか、やや逃げ腰の拓郎。
　その二人がはしゃいでいる？　ところに、ラッセルが駄菓子を食べながらやってきた。
「志波兄のテンションすっげー」
　そう言いつつ、トラも負けじと一瞬だけ二足歩行をする。
　……トラが本日どれくらい黄色い歓声を聞いたのかをラッセルは振り返らないことにしている。
　さて、武道も拓郎もラッセルの事に気づいたようだ。
「四月生まれはお祝いされる権利があるからな、一緒に写真をどうだ？」
「お？　兄弟水入らずにお邪魔していいのかい？」
　そう言ってニヤリとするラッセルを武道は嬉しそうに手招いた。
「……わ、笑う……のか？」
「ほら、愛想良くしねーと、せっかくだからかっこよく撮ろうぜー。こんな祝い事きっともうねーしさぁ！　楽しまねーと損だ！」
「にゃー！」
　そう言って、かっこよくポーズを決めるラッセルと拓郎と……トラ。
「よっしっ」
　武道がタイマー動かすと、カウントが始まった。
　ゆっくりと、タイマーか経過しシャッターがきられる。
　三人と一匹が収まった写真は、綺麗に撮れていたという。

　さて。

　ラッセルが去ったあと、ステージを見にやって来た二人。
「……そう、いえば。どうして、この……格好？」
「寝子島魂を世界に……世界に……示したかったのっ！」
　拓郎の疑問にそう言って、上着をバッと脱ぎ捨てる武道。
「では、次は飛び入り参加の志波武道さんです、どうぞー！」
「ゆ、癒着……？」
　宴会委員の景気のいい合図とともに、昔のイケメンアイドルグループの曲が流れ始める。
　八十年代に流行した彼らは、ローラースケートときらびやかな衣装を身にまとっていたが、まさしく武道が纏っているのはその衣装とローラースケートである。
　ステージが盛り上がる中、歌い踊りはじめる武道、ついでにステージからすごい勢いで写真を撮っている。
　そうこうするうちに、何だかんだで拓郎も楽しんだのであった。
「世界中の青空を、全部……寝子島に、持ってきてしまった……そんな、素晴らしい春日和…の、素晴らしい一日……だな」
　祝ってくれる人、祝われる人……そして自分の兄を見ながら、拓郎は心からそう思ったのであった。