【ステージ爆発？！　危機一髪！！】


　飛び入りやらアイドルやらの歌が流れるステージだったが、少し休憩時間を挟むと、出番の彼らがいる。
「さて、次はお馴染みのあのパフォーマンスから行きましょう！」
　と宴会委員の合図とともに、独特なベースラインの曲が流れ始め、背景のセットが煉瓦の壁のと入れ替えられる。
「おぉぉぉぉぉぉっ！」
　という、どよめきと拍手に迎えながら出てきたのは黒の燕尾服に付け髭をした初島 優であるが……。
　ドンッ！　という音と共にステージがピンク色のスモークに包まれた。
「四月生まれの諸君、お祝いに爆弾を用意した」
　スモークをかき分けながら、現れたのは巨大なくす玉を持ったぼろろぼろの姿の草薙 龍八であった。マイクを拝借して物騒なことを口走り、ステージを占拠。
「おっと、これは一体何が起こっているというのだー！」
　宴会委員はもはや傍観の姿勢である。
「げぇっ！　青春を走るエロテロリストー！」
　優も優で何かピントのずれたことを言う。
　そして、観客は喜んでいる。
「変な刑事に追い回されて寝不足だが、まぁいい。このステージは……」
　と、何かを言おうとした矢先であった。
「来ると思ったのじゃ仇敵草薙龍八！」
　寝子島の太陽を背に、一人の美人さんが舞い降りた。
　それは『ＴＲＡＮＳＭＵＴＥ』で大人の姿になった大田原 いいなであるが、その事態に気づいているのは、優だけであった。
「あんた……何ものだ？」
「エロリストに名乗る名は無い！　貴様みたいに阿呆な輩は、断じて許せんのじゃ！　……とーう！」
　そう言いつつ、セーラー服に身を包んだいいなはステージに降り立つ。手にはヨーヨーを持っている。
「おまけに大田原さんはなんか大人になっちゃってるしー」
　優も優で完全に慌てている。
　さて、いいなが落下していつの間にか用意されたマットに降りた瞬間であった。
　ツルッ！　ベシャッ！　ボンッ！
　スカートの裾を踏んだり、そのまま躓いたりで散々ないいなである。
「……やっぱり無理だったか……あれはヤバイ音がしたな」
　じりじりとその間に後退する龍八。
「ふべっ！…何故斯様なことになるのじゃ馬鹿者～！」
「……」
　優はちらりと会場を確認する……ウケている、ウケているようだ。
「もうええわ！　今日という今日は貴様の顔にこいつを叩き込んでやるわ～！！」
　と言いつつ、花火のような何かを龍八に発射するいいな。
（※良い子はマネしないように！　←）
「戦略的撤退を開始する」
　ひらりと逃げる龍八に、会場は何故かヒートアップしたのであった。

　……さて、そんなこんなでミュージックが再開された。

　いいなは元の姿に戻ることなく、こちらも黒の燕尾服に付け髭にさくっと早着替えをした。
　とりあえず、続行である。
　これ以降はしばし、定番のネタが続いた。
　灰皿なげに、優が投げるフルーツを串刺しにする演目……。
　まさに、昭和の一世を風靡したお笑いコントの一部が再現されている。
　しかし、ネタの神というものは、どのように微笑むかわからない。
「ふむ、……なれば次は、ばけつ回しかの？」
「よし、じゃあ行くよー」
　といつもの調子でやったのたいいな。
　バケツまわしはそれこそ最初は快調に進んでいたのだが、やはりこれはコントであるからして……。
　バシャンッ！
「みぎゃっ！」
　水をかぶったいいなもまた一興。男子がおぉ！　と羨望の眼差しを向ける。
「うむー、ネタが分かっておるとは言え、厳しいものがあるのう……おや？　儂の方を見ている輩が多いが……何かあったかの、優殿？」
「あわわわわ、タオルー！　タオルー！」
　とまぁ、そんなこともありつつ、ついにネタも終盤へ……。
「そうはさせん」
「げっ！　明日から変なコールをうけそうなエロテロリスト！」
　突然、BGMがあっはんうっふんな雰囲気に変わると共に、特設ステージの
「まだ懲りぬか貴様！」
　驚く優に、いいなが手にもっていたものを投げようとする。
「おっと、そいつを投げていいのかな？」
　そう言って、自分の隣にある爆弾？　をポンポンと叩くエロテ……じゃなくて龍八。
　あれが火薬であればこの特設ステージは吹っ飛ぶであろう大きさだ。
「な、爆弾ー？！　ま、マズイー！！」
　そう言ってリアクションする優とは対照的に、いいなは優の手からナイフらしき何かを取ると、龍八に投擲した。
「喰らえ！」
「ふはははははッ！　効かんッ！」
　バサッと、着ている服をうまく翻してナイフらしき何かを弾く龍八。
「……生まれてきた事を祝うぜ……後で生まれてきた事を後悔ができるようにな」
「うわーもうだめだー！」
　高笑いし、ぐいっと紐を引っ張る龍八に、ビビる優。
　その瞬間……。
　ボンッ！　という音と共にくす玉がはじけ飛び、『祝！四月生まれ。おめでとう！』と書かれた垂れ幕が出てきた。
「という訳で、四月生まれはおめでとうなのじゃー！」
　慌てていいながパフォーマンスであることを強調する。
　ドッ！
　会場がホッとしたように爆笑した。
「あ、危なかったー」
　そう言いつつ退場するいいなと優。
「ふはは、ではさら……ば？」
「あら、テロ屋さん。どちらへ？」
　さっさと裏から逃げようとした龍八を北風 貴子率いる風紀委員がずらりと取り囲んだ。
「な、なんじゃこりゃー！」
「それは風紀委員のセリフよ。連行しなさい！」
「くっ……」
　その後、龍八と風紀委員の壮絶な鬼ごっこはしばらく続いたとかなんとか。