懐かしんでの大宴会！　４月生まれを祝おう！｜リアクション

懐かしんでの大宴会！　４月生まれを祝おう！

シナリオ『懐かしんでの大宴会！　４月生まれを祝おう！』にて。

【レジェンド・オブ・紙芝居】

　四月二九日が誕生日の椿美咲紀は、特設ステージの一角に座りながら、お菓子を分けたりしてステージの様子を楽しんでいた。もう昼はとっくの昔にすぎており、そろそろおやつを食べたらお昼寝、といった感じであろうか。
　今日授業があったらものすごく眠いであろう時間である。
「何あれ、すごい！　すごい！」
　とののこの声も聞こえた気がするこのステージ席は、現在休憩時間で、先程から人がどんどん詰めかけていた。
　確か、次はこのステージ最後のイベント紙芝居だったはずだ。
「昭和大宴会で、紙芝居やってます～♪　水あめもあるよ」
　と宴会委員会でもある響タルトが宣伝して回った結果であった。
　ざわざわと、騒がしくなってくる中、美咲紀は手元の携帯ゲームに目をやった。
「なら誕生日プレゼントに良いもの送ってあげる」
　と、自分の祖母から昭和というコンセプトに合った誕生日プレゼントが送られたのだが、これが非常にレトロである。
　途中からマルチスクリーンなど非常に今の携帯ゲームを想像させる機能があり、内容もそれなりに面白い。黒い影のような何かがゲーム画面の中を動き回る……。
　ちなみに、美咲紀がやっているものは初期に出されたもので、画面は一つ。電池を出し入れするとあるバグモードが機能したりする代物だ。
十字キー？　なにそれ美味しいの？　カセット？　という感じである。
「結構難しいわね」
　そう言いつつも、熱中してプレイするうちに、開演時間となった。
　多くの拍手の中、和風だったり、昔の商人風の格好をして打楽器やらと共に紙芝居のリアカーを引いてきたのは秋風透である。タルトと透がそれぞれ交代で話者を務めるようで、ひとまずタルトは楽器を使う役と行ったところであろうか。
「さぁさぁみんな御立会い！　俺たち宴会委員会は紙芝居を披露するぜ！」
「四月生まれの人は誕生日おめでとう！　四月生まれでない人も楽しんでいってね！」
　その光景に不破ふわりなど四月生まれの生徒もそうでない生徒もわっと盛り上がる。
「へぇ、これが水飴なのね」
　そういえばと、美咲紀は紙芝居をする二人を見ながらもらった水飴をちょっと食べてみる。
「こういう味なのね……」
　なるほど、と美咲紀が頷く中、紙芝居は進んでいく。
　肝心の話の内容はどうなっているかというと……。
　怪人桐島は一目惚れした弥生の誕生日を祝いたくてさらってしまう。
　しかし、さらってきた屋敷に日頃お世話になっていた少年探偵団なるチームが悪を倒せと言わんばかりに弥生を助けに来る。
　焦った怪人が少年探偵団を驚かせて、必死に追い返そうとするが、少年探偵団はなかなか怖がらないし、勇気をもって進んでくる。
　怪人は考える、いったいどうしたら自分は弥生の誕生日を祝うことができるのか？
　弥生は知っていた、怪人桐島の優しさと、少年探偵団の優しさを……。
　少年探偵団が怪人の部屋に乗り込んだとき、弥生はひとつの提案をする――。
　そんなお話だ。
　作中に出てくるのは浅井少年、泉探偵:、黒崎少年、五十嵐少年といったように、寝子高の先生をオマージュしたものばかりであったが、反応やその言動がとてもよく反映されていて、ホラーパートでは笑いが起きていた。
（例えば、五十嵐少年がぶつぶつ言いながら実は幽霊よりよっぽど怖い化学テロを起こしてみたり、ミイラ男を追いかける浅井少年が追い抜いてしまったり）
　最終的には、弥生の仲介と怪人の降参により皆で誕生日を開くことになった……そういうお話だった。
　ちなみに、話者がタルトの場合。
「白皙の頬を紅に染めて言う『甘えてばかりでごめんね…冷たい世間の風に負けずに生きてこられたのは君のおかげだ……神様は僕の気持ちを見ていてくださる』」
　と、妙に少年同士や同性のわりに色っぽい展開があって一部の女子が興奮した。
「おっと、そんな風について行ってもいいのだろうか浅井少年！　さぁ浅井少年の運命や如何に！」
　と透が話者の場合は、妙に調子をつかむのが上手く、その場にいた美咲紀をはじめとする多くの寝子校生は登場人物の親しみやすさもありすっかり話の内容に引き込まれていったのである。
　美咲紀が気づいたときには、あっという間に紙芝居は終わっていた。
「あぁ、終わりなのね……」
　ほっと何処か空気が緩んだ気がした。
　一拍遅れて拍手が始まる。
「誕生日おめでとう！」
「祝ってくれてありがとう！」
「生まれてきてくれてありがとう！」
「とにかくおめでとう！」
「祝ってくれて、ありがとう！」
　夕方に咲く花があるとすれば、例えばこのような声の広がりを言うのだろうか。
　特設ステージから伝播したこの『ありがとう』はまたたく間に会場いっぱいに広がっていった。
　そして、その広がりが止む頃……。理事長による閉幕宣言が行われた。
「はい、では、本日の宴会、これにて終了！　いよーっ！」
　パンッ！
　っと、手のひらと手のひらが打ち合うのを合図に、夜の帳がゆっくりと降りてきたのだった……。

　……後日、この大宴会は「昭和祭特別号」と題して修の文責で掲載された。
　しばらくの間、プチ昭和ブームが続くと……いいのかなぁ？

　おしまい

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あとがき

担当マスター：じんの
ファンレターはマスターページから！

皆様、おつかれさまでした。
楽しんでいただけたでしょうか？
皆さん、色々調べたり知ってたりするようで
どれくらい再現できたかわかりませんが
精一杯かかせていただきました。

ありがとうございますと
４月が誕生日の方はおめでとうございます！

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