むかしむかしあるところに　～お姫様の願い事～｜リアクション

むかしむかしあるところに　～お姫様の願い事～

　　【城内・信頼する弟子に宛てて】

　「この時点でスティレットではなく、ミセリコルデ(落馬した騎士を殺す呼び名：慈悲の剣)と言ってくるのがマニアックねん……実は殺す気なのかしら……？
　──鋼糸はこの世界の技術じゃまだ出来ていないみたいねん。
　仕込みブーツがあったのが幸いだったけれども……」

　城からの武器防具調達を一手に請け負った火焔燐は、早速必要道具を出入り口の用意された馬の側に積み込んでいた。
　ラウンドシールド３個。こちらは何に使うのかは分からないが、必要だから要求されているのだろう。
　そちらも早速馬に積み込む。

　一通りの荷物を積み込み、志波高久のいる、宿屋に運んでもらうと、火焔燐は弟子一人、夏神零へ宛ててのちょっとした巻き筒クラスの太さの手紙を伝書鳩に運ばせることになった。

　その内容を僅かに覗けば、戦場は夜の街中を利用しての、適切な陣取りと計略を。
　相手の槍という適性を逆手に取る方法など。
　夏神は乗馬が可能。外見的特長を合わせれば女物のドレスを着せれば松明の明かりのみの中、王女と錯覚させる事も可能かも知れない。
　それを知っている彼女は、弓と槍を合わせて零宛てに送り渡す準備をした。
　解呪の隙は上手くいけばこれから明らかになるだろうが、それについてはまだ情報待ち。王女が実際に所有していた衣類なども有った方が良い。　それらについては情報が分かり次第、鳩を飛ばすつもりだ。

　他にも必要な情報を纏めて、あとブレスレットの情報を書き連ねれば、やっと伝書鳩も使えるという物だろうから、ひとまずはその席を立ち、軽く背筋を伸ばす。
　そのまま、何かの役に立つかもしれないと、城内の配置と特別良い馬はいないか等……探索に思考を纏めつつ城内探索に向かうことにした。