this frame prevents back forward cache
0
0
はじめての方へ
ヘルプ
ログイン
\ オーバータイム!/
種族
学年:職業
00月00日生 00歳
AAA000000
ホームトップ
おしらせ
新着通知
はじめての方へ
遊び方
世界設定
キャラクター一覧
キャラクター検索
キャラクター作成
らっポ
チケット
コミュニティトップ(検索)
コミュニティ一覧
公式コミュニティ一覧
公開トピック一覧
コミュニティ書き込み検索
シナリオトップ
シナリオ一覧(参加受付中)
シナリオ一覧(すべて)
リアクション一覧
ゲームマスター一覧
ゲームマスター検索
イラストトップ
イラスト一覧
イラスト検索
イラストレーター一覧
イラストレーター検索
自作イラスト一覧
アイテム一覧(検索)
マイリスト一覧(検索)
寝子島(全景)
寝子島(地図)
寝子島(セカンドマップ)
寝子島高校
Melt Sinner
<< もどる
1
…
7
8
9
10
11
…
14
つぎへ >>
今日は、静かな夜だった。虫ですらも声を潜める夜はどこまでも静謐で、空に浮かぶ満月ですらも自己主張を控え目にするかのようにボンヤリと滲んでいた。薄い雲が数個星を抱き、少しだけ周囲が暗くなったような錯覚に陥る。星が幾つか消えてしまったところで、地上の明るさは変わらないと知りながら、
桧垣 万里
はそっと目を伏せた。窓を開け、冷たい空気を室内に入れる。初夏を思わせる草の匂いを胸いっぱいに吸い込み、ふと聞こえて来た歌声に耳を澄ます。透き通るような声は高く、何の歌を歌っているのか知りたくて、言葉を頭の中で組み立てようとするが、日本語でも英語でもない歌詞は音となって届くだけで、意味までは教えてくれない。
窓から身を乗り出すようにして外を見れば、暗い路地に立つ小さな少女が見えた。街灯の光に照らされた少女の髪は淡い金色で、白い肌は闇に良く映えた。少女が空を見上げ、先ほどと同じ歌を紡ぐ。心に染み入るような歌声に、ふと『彼』の事が脳裏を過ぎる。
万里の双子の兄であり、万里の片割れ。……本物の『万里』。一緒に生まれてくるはずだったのに、万里だけ生まれて来てしまった。彼につけられるはずだった名前を、奪ってしまった。
仕事や学校、楽しい毎日を送るうちに、ふと忘れそうになる彼の存在。楽しさの中でふと顔を覗かせる、自分は果たしてこのままで良いのだろうかと言う不安。『万里』であるはずだった彼は、万里の事をどう思っているのだろうか。一人だけ生まれて来てしまった事を、妬んでいるのだろうか。名前を奪ってしまった事を、恨んでいるのだろうか。万里が『万里』を名乗っていても良いのか、時々酷く不安になる。
考えても仕方がないと言う事は分かっている。どんなに悩んでも、兄『万里』には逢えない。もしも叶うなら、逢いたかった。逢って話をしてみたかった。もしも一緒に生まれて来たならば、万里と『万里』はどんな兄妹になっていただろうか。仲の良い兄妹になれただろうか。一緒に買い物をしたり、学校の悩みを相談したり、時々喧嘩なんかして……。ボンヤリとそんな想像をしていた時、万里の耳に電子音が届いた。何の音だろうかと考えを巡らせ、はっと顔を上げるとキッチンまで走る。クッキーを焼いていたのをすっかり忘れていた。オーブンから出したクッキーは良い色で、ふわりと香る甘いにおいに喉がゴクリと鳴る。
「こんな時間に食べたら太るかな? ……うーん、一枚くらいならいいか」
焼きたての美味しいクッキーを食べられるのは今だけだという誘惑に耐え切れずに、万里は熱々の一枚を掴むと一口齧った。軽い舌触りと口いっぱいに広がる甘さに思わず微笑んだ後、万里の意識は途切れた。
クッキーをお皿に乗せ、千里は困ったように茶色い瞳を伏せるとクシャリと髪をかきあげた。まさか、万里がそんな事を考えているとは思ってもみなかった。千里は、万里の事を嫉んでも、恨んでもいない。自分の分まで生きてくれてありがとうという、感謝の気持ちしか抱いていない。千里がこうしていられるのは、万里がいてくれるからに他ならない。
「僕のほうこそ『千里』の名前を奪ってごめんね」
ポツリと呟いた言葉が、誰もいない部屋に響く。開けっ放しの窓に近づけば、先ほどの少女は同じ場所にまだ立っていた。空を見ていた瞳が、千里へと向けられる。透き通るような灰色の瞳が驚いたように見開かれ、慌ててその場を走り去る。白いワンピースの背中を、見えなくなるまで見送る。
元々『万里』の名前は自分のものだった。本来なら万里が千里で、千里が万里であるはずだった。けれど『万里』は生まれてくる事が出来ず、双子であったはずの兄妹は妹の『千里』だけになってしまった。両親は双子の兄として生まれてくるはずだった『万里』の存在を忘れないためにも、彼女にこの名前をつけた。
「万里……いや、千里。オレはキミのことが大好きだよ」
鏡に映る自身の瞳を真っ直ぐに見つめながら言う。万里よりも低い声、けれど鏡に映る姿は万里のまま。そっと鏡に手を伸ばし、頬に触れる。ただ一人の大切な双子の妹、掛け替えのない片割れ。けれど、どれほど大切に思っていても、彼女には届かない。今の自分がいるこの時間は、万里の記憶には残らない。
会話をする事も、触れる事も出来ない。決して交わることのない時間は、深く考えれば考えるほど胸を締め付ける。こんなにも近くにいるのに、万里と千里の距離は遠い。
「……この声が、届けばいいんだけどな」
寂しげに呟かれた言葉が、空気に溶けて行く。千里の想いさえ届けば、万里が思い悩むこともなくなるのに。けれど、生まれる事のできなかった『万里』が『千里』を見守っていられる、これはとても幸せなことで、これ以上を望むのは我儘だと分かっている。でも、考えてしまう。もしもこの声が、届いたなら……。
千里は小さく唇を噛むと、そっと窓を閉じた。
<< もどる
1
…
7
8
9
10
11
…
14
つぎへ >>
このページにイラストを設定する
シナリオ
シナリオトップ
シナリオ一覧(参加受付中)
シナリオ一覧(すべて)
リアクション一覧
ゲームマスター一覧
ゲームマスター検索
シナリオご利用ガイド
グループ参加ご利用ガイド
シナリオタイプのご案内
Melt Sinner
シナリオガイド
リアクション
参加キャラクター一覧
コメントページ
ダイアリー一覧
シナリオデータ
担当ゲームマスター
雨音響希
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
なし
シナリオジャンル
日常
定員
15人
参加キャラクター数
15人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2014年02月13日
参加申し込みの期限
2014年02月20日 11時00分
アクション投稿の期限
2014年02月20日 11時00分
参加キャラクター一覧
もっと!