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Melt Sinner
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開いた窓から吹き込んできた冷たい風は、物悲しい旋律を乗せていた。透明感のある歌声は美しく、何となく御陵 優妃を思わせる声に、深雪は目を閉じた。歌はまだ聴いた事はないが、きっと彼女が歌えばこんな感じになるだろう。風に揺れていた歌声がクリアに聞こえた瞬間、深雪は顔を上げた。間違いない、この声は優妃の声だ。時計に視線を向け、遅すぎる時間に眉根を寄せる。こんな時間に優妃が歩いているとは思えなかったが、声は確かに彼女のものだ。躊躇ったのは一瞬だった。もし違っていたなら、それで良い。深雪はパーカーを羽織ると外へ出ようとして、
霧生 渚砂
に止められた。
深雪は掻い摘んで歌声の事を説明すると、外へ出た。一人でこんな夜遅くに出歩くなんて危ないと、渚砂がその後を追うように出てきて、二人で並んで歩き出す。
「綺麗な歌だな……」
渚砂がポツリと呟き、空を見上げる。満月は完璧な円を描いており、夜空いっぱいに散りばめられた星々は今にも降って来そうだった。星ヶ丘の名前に相応しい美しい夜空だったが、隣を歩く深雪の表情は悲しそうで、渚砂はそっと目を伏せた。
人によっては、聞こえてくる歌と星空はどこか悲しい気持ちにさせると言うか、罪を思い出させるというか、表現するのが難しいが、何となくセンチメンタルな気分にさせる気がする。特に最近、深雪は何かに悩んでいる様子だった。何があったのか聞いても良いのか分からずに、触れないようにして来たが、渚砂が何もきかなければ、深雪は何も言わないだろう。そして一人で悩み事を抱え込み、両手に抱えきれないほどの悩みを前に、自分自身を傷つけてしまうかもしれない。
「深雪……話したい事があったら、話してくれていいんだよ?」
囁くような声は、風がすぐに攫ってしまう。深雪の赤い瞳が渚砂を見上げ、戸惑ったように左右に揺れる。
「って言っても、自分が過去に何したか覚えてないから、いいアドバイスとかはできないから、思った事を言うしか出来ないけど……あ、勿論深雪が言いたくなければ言わなくても良いからな」
慌ててそう付け足す。深雪の足が止まり、視線が足元に落ちる。そう言えば、渚砂には、何故深雪が一人でこの島にいるのか、話していなかった。でも、言っても良いものか、受け入れてもらえるのか分からずに、言葉が上手く出てこない。渚砂は、無理には聞かないよと言うかのように、優しく微笑んでいる。けれど、何もきかない渚砂の好意に甘え続けているわけにはいかない。いずれは話そうと思っていたこと、一緒に暮らしているのだから、自身の狂気を知らせておかないわけにはいかない。
「……中学の時に、弟を助けるために……殺人未遂を犯した事がある……」
重々しくそう告げる。渚砂がどんな顔をしているのか知るのが怖くて、視線を足元から上げる事が出来ない。深雪は自身のつま先を見つめたまま、ゆっくりと話し出した。
中学の時の事は、正当防衛と言う事で罪に問われる事はなかった。けれどあの時から、深雪の中の何かが歪んでしまった。暴力の音を求める両手、その先から紡ぎ出される旋律は、異物を含んでいた。暴力の音を渇望する深雪の心に、弟は気づいてしまった。自分のせいだと責任を感じた弟は、深雪に依存するようになった。弟の激しい依存は、家族の関係をも変えてしまった。自身の存在が弟を縛り、穏やかだった家族の関係を壊した。一度壊れた関係は醜く歪んでおり、家族と一緒にいるのが辛くなって、深雪は一人でこの島に来た。
島に来てからも、たくさん喧嘩をした。中には取り返しがつかない程ボコボコにしてしまったこともある。このままではダメだと、分かっていた。けれど、深雪は暴力の音を求め続けた。悪友に諭されても、狂気を抑える事が出来ない自分は、本当に異常だと思った。このまま永遠に暴力の音だけを追い求めるのかもしれない、そう思うと怖くて、でもこんな事は誰にも言えなくて……不安と恐怖が、苛立ちへと変わる。そしてそれは破壊的な衝動となり、暴力へと繋がって行く……。
一年生のときは、荒んでいた。けれど二年生になって、また変わった。隣に修が越してきて、クラスメイトと話すようになって、サティを家族として迎え入れ、渚砂が家に来て、優妃と出逢って ―― 素直に、毎日が楽しかった。でも、彼らと接する度に、頭の中で声がする。お前は今までどれだけの人間を壊してきたんだ? その音に、どれだけの高揚を感じてきたんだ? それを知った友人達は、お前の事をどう思うんだろうな……。
「自分に、罰を与えるつもりでこの島に来たんだ。家族に会えない苦しみを味わおうと思った。……それなのに、こんなに充実してていいのか? 自分の狂気を隠しながら、何も知らない友達に触れていいのか?」
信頼の眼差しを向けられるたびに、罪悪感に苛まれる。……罰を与えようと思ったなんて、ただの言い訳だ。深雪は、家族から逃げるためにこの島に来た。何も知らずに微笑む彼らを見るたびに、逃げ出したくなる。家族から逃げ出した時と、同じ様に……。
俯いたままの深雪の頭にポンと手を乗せ、渚砂は感情を押し殺すように唇を噛んだ。やっと過去を話してくれたのが、少し嬉しい。閉じていた扉を開けてくれたような、心を許してくれたような気がする。
「幸せになっていい権利は、誰にだってあるはずだ」
そして、罪も誰にでもある。罪の大小なんて関係ない。
「大切な人が傷付けられたなら、自分が制御できなくなるくらい怒りもするさ」
深雪の赤い瞳が、渚砂を見上げる。どこか不安定な瞳は透明で、渚砂はそっと手を離すと微笑んだ。
「この前言ったように、深雪がどんなだろうと自分は深雪の味方だし、そのぐらいで揺らぐ繋がりなんかじゃない。深雪はもう少し、自分に正直になってもいいんじゃないかな。……深雪はとっても優しいから、本当に自分がしたい事を見失ってる気がするんだ」
まるで自分に言い聞かせているようだった。渚砂にも、罪はある。しかも、現在進行形で。分かっているのに、治そうと思うことすら出来ない。
深雪が自分の知らないところで苦しんだり、笑ったりする事にどうしようもなく嫉妬してしまう。感情を共有したい、出来るなら、深雪が心動かされるただ一人の人間になりたい。そう思っている自分が今も心にいて……。
「優妃!」
深雪の瞳が渚砂から逸らされ、暗がりに立つ少女へと向けられる。白いノースリーブのワンピースを着た少女がビクリと肩を震わせ、淡い金色の髪を靡かせながら振り返る。お人形のように可愛い子だった。深雪が走り出し、少女の緊張していた顔が笑顔へと変わる。
「深雪さん……こんな夜中に、どうしたの?」
「それはこっちの台詞だ! そんな薄着でこんな夜中に一人で歩いてたら危ないだろ!」
着ていたパーカーを脱ぎ、優妃の肩にかける。
「昼間、暖かかったから、つい。深雪さんは、寒くないの?」
「俺は大丈夫だから」
チラリと見えた横顔は笑顔で、渚砂の心の中にどす黒い嫉妬が渦を巻く。知らない女の子、親しげな様子、滅多に笑わない深雪が、楽しそうに笑っている……。優妃の大きな灰色の瞳が渚砂に向けられ、怯えたように深雪の後ろに隠れる。細い指は深雪のシャツをしっかりと握り締めており、更に落ちていきそうになる感情を、渚砂は必死に繋ぎ止めると笑顔を浮かべた。
「その子が、さっき話してた優妃君?」
「あぁ。……優妃、渚砂は
霧生 渚砂
って言って、俺の同居人……兄弟みたいなもんだから、怖がらなくて良い」
優妃の瞳が、渚砂を見上げる。心の底を見透かすような瞳に、渚砂は一瞬だけ目を逸らしてからすぐに微笑んだ。
「優妃君は、人見知りなんだよな? お兄さん、悪い人じゃないから大丈夫だぞ!」
「……渚砂さんは、深雪さんのこと……好き?」
「なっ……!?」
思いも寄らなかった言葉に、深雪が驚いて優妃を振り返るが、灰色の瞳は真剣だった。渚砂の心の奥に、言葉に出来ない漆黒の感情が蓄積されていく。優妃は、深雪の事が好きなのだろうか? そして深雪も、優妃の事が……?
「あぁ、勿論」
渚砂は、張り付いた笑顔のまま頷いた。強張っていた優妃の表情が、緩やかに笑顔へと変わる。
「その音と、深雪さんを信じる。その音は、真実だと思うから」
言っている意味が分からずに困惑する渚砂をよそに、優妃は深雪の背後から出てくると無邪気な笑顔を浮かべた。
「優妃は、何でこんな夜中に一人で歌ってたんだ?」
「眠る時間だから、歌っていても良いのよ」
会話になっていない。そう感じたのは、渚砂だけだった。
「でも、一人は危ないだろ。呼んでくれれば、一緒に行くから」
「迷惑は……」
「迷惑じゃないから。優妃の歌も聞けるし。……あの歌、フィンランド語か?」
「そう。ママが歌ってたの。別れの歌って言ってたわ」
「そうか……。もう十分歌ったか?」
「うん。帰ろうと思っていたところなの」
「それじゃあ、送る。一緒に帰ろう」
「ありがとう」
こんなにも近くにいるのに、深雪が酷く遠くにいるような気分になる。聞いていてもわからない会話は、二人の間では成り立っているようで、分からない気持ちがもどかしい。
「渚砂?」
いつの間にか二人は歩き出していた。いつまでたっても動かない渚砂に、深雪が心配そうに声をかける。モヤモヤとした気持ちを押し殺しながら、渚砂は着ていた薄手のカーディガンを深雪の肩にかけると、一歩後ろから二人の歩調に合わせて歩いた。
優妃の楽しそうな声が、彼女を見る深雪の優しい眼差しが、時折触れる指先が、どうしようもなく渚砂の心を掻き乱す。たった一人の大切な家族を突然奪われたような喪失感に、目の前が暗くなって行く。このまま見続けていたら渚砂の中の黒い感情が溢れ出してしまいそうで、優妃の家につくまでの間、ずっと足元だけを見続けていた……。
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あとがき
担当マスター:
雨音響希
ファンレターはマスターページから!
ご参加いただきましてまことにありがとうございました。
罪の形って色々あります。償えるもの、償えないもの、一生ついてまわるもの、いずれは解決できるもの……。
今回、罪について、皆さんの事について、深く考えながら執筆させていただきました。
少しでも、皆さんの今後を語る上で参考になるようなお話になっていればと思います。
またご縁がありましたら宜しくお願いいたします。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
雨音響希
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
なし
シナリオジャンル
日常
定員
15人
参加キャラクター数
15人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2014年02月13日
参加申し込みの期限
2014年02月20日 11時00分
アクション投稿の期限
2014年02月20日 11時00分
参加キャラクター一覧
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