夏だ！　海だ！　大雪だ？！｜リアクション

夏だ！　海だ！　大雪だ？！

（もう、この吹雪は一体なんなのー？）
　両手でしっかりとジュースを持ったまま、涙目で吹雪の中を彷徨うベガ。
　どんなに吹雪こうと、愛する信彦のジュースは決して手放さない。
（彦にゃん無事かな。絶対、ジュースを届けるからねっ）
　硬いかたーい決意の元、ベガは吹雪の中を信彦目掛けて突き進む。

「寒さなんか、敵じゃないのよ♪」
　暑さでへばっていたのが嘘のように、代真子は元気いっぱいにペダルを漕ぎまくる。
　ぽっちゃり体型は熱さにはめっぽう弱いけれど、寒さには格別な抵抗力。
　だって天然の脂肪っていう『必殺ミートテック』を着込んでいるのだから。
「吹雪？　どんとこーい♪　むしろこんな事になるなら記念にカメラ持ってくるんだったよ」
　すっかり元気になった代真子は、一直線にペダルを漕ぐ。
　そう、激うまラーメンを出すという海の家に向かって。

「……って寒い？！　こんな夏まっさかりに？！」
　水の掛け合いっこをしてはしゃいでいた創と牡丹は首を傾げる。
　いつの間にか世界が吹雪いていた。
　真夏なのに。
「ろ、ろっこん攻撃だー？！」
　それしか考えられないけれど、でもなんで？
　創はおろおろと、それでも最愛の先輩のことを最優先に考える。
（ど、どうしようどうしよう、先輩まで体が冷えちゃう！　こんな時ってどうすればいいんだっけ？！）
　必死に記憶を辿る。
　例えば雪山で遭難した時とか。
　はっと思い出し、創は牡丹に抱きついた。
「え、えっと、まだ寒いと思うけど、これで我慢してね！」
「これで二人とも温かいよね」
　ぎゅうっと抱きしめ返す牡丹。
　人目とか海辺だとか吹雪だとか。
　そんなものはもうどうでも良かった。
「ひゃんっ？！　せ、せんぱい、その……」
　さわさわと尻尾を撫でられて、創は肩をすくめる。
「寒風摩擦です。あったまります！」
　もっふもっふの犬尻尾はそれだけでも温かいが、撫でなでされるとより一層温かい。
　くるっと尻尾を丸めて牡丹を抱きしめるようにすれば、もう完璧。
　天然の暖房だった。