夏だ！　海だ！　大雪だ？！｜リアクション

夏だ！　海だ！　大雪だ？！

「おいおい、なんでこんな真夏に吹雪くんでぃ？」
　瓢は双眼鏡に写る光景に首を傾げる。
　肉眼で浜辺を見直しても、やはり間違いなく吹雪が発生していた。
（あっしの他に、カップルにちょっかい出してる奴がいる？）
　双眼鏡をもう一度構え、瓢は浜辺をくるりと見渡す。
　猛吹雪とはいえ、その吹雪の方角性やら何やらには法則がある。
（あの女やな）
　瓢は高らかに笑う麗子を発見！
　そしてすかさず高台から浜辺へ、麗子目掛けて走り出す。
（あっしのカップルに手を出したからには、ちぃとばかりナシつけんとなぁ？）
　瓢にとって、カップルをいたぶっていいのはこの世で瓢ただ一人。
　浜辺に近付けば近づくほど視界が吹雪で遮られるのだが、瓢は双眼鏡で把握していた麗子の位置目掛けて走り続ける。

「また、ろっこんか！」
　猛吹雪に戸惑わないのは、もう何度もろっこんの不思議を体験しているからか。
　羽織っていたパーカーの前を締めて、修はブルーを胸元に入れる。
　ブルーは突然の吹雪にプルプルと震えていた。
　天然の毛皮を纏っているとはいえ、とても寒そう。
「ブルー、参ったな……」
　寒さに震えるブルーを何とかしてやりたいが、生憎、これといって防寒類は持ち合わせていない。
（おや、あの方は？）
　吹雪の遠目に、何かが映る。
　髪を振り乱して泣いているようにも見えるのだが……。
　修の性格的に、放っておくなど出来るはずもなく。
　ブルー、もう少しだけ辛抱してくださいと語りかけ、修は吹雪を泣いている女性――　麗子に向かって突き進む。