夏だ！　海だ！　大雪だ？！｜リアクション

夏だ！　海だ！　大雪だ？！

「さ、寒い……っ」
　急な吹雪に、恵御納夏朝は震え上がった。
　日焼け防止の為に持ってきていた長袖と長ズボンを素早く着込むが、所詮は日焼け止め用。
　真夏から一気に真冬と化した気温に適応できるはずもなく。
（暑いより寒いほうがましだって思ってたけど……訂正するよ。それは、薄着や厚着の選択ができる時だけの限定だ……！）
　カタカタと寒さでかみ合わない歯を鳴らしながら、夏朝は必死に思考を巡らす。
　なぜ急にこんなことになったのか？
　青い空と青い海、さんぜんと輝く太陽は一体どこへ消えたのか。
（む……？）
　夏朝が目を凝らすと、どこからともなく飛んでくる吹雪は、カップルを中心にぶっ飛んでいくような？
（夏の浜辺にこんな吹雪が起こるなら、神魂かもれいびの仕業……。ましてやカップルで溢れかえる浜辺で発生して、なおかつカップルばかりが狙われているというのなら）
　答えは、一つ。
（リア充を爆発させようとする奴に違いない！！！）
　くわっと、夏朝の茶色い目が開く。
　左手の猫型パペットもうんうんと頷いている。
「許せ……ない……」
　ふつふつと、夏朝の身体から怒りのオーラが漏れ始める。
　普段大人しい夏朝が怒る姿を見た者が、かつていただろうか。
　すくなくとも、今この海でその姿を見たものはいなかった。
　見たものは恐らくその非現実的な光景に、目を疑っただろう。
　吹雪は全てを覆い隠す。
　そう、怒りに燃えた夏朝がそこらじゅうの雪をかき集めて、ぎゅうっと硬い雪玉を作り続ける姿さえも。
「この怒り……この雪玉に……ぎゅうっと込めて……」
　見るからにこれ以上はないという硬さになっている雪玉を、夏朝は次々と作り出しては手提げ付きビニール袋につめていく。
　ビニール袋は、楽しいはずの海辺で出るゴミを入れるためのものだった。
　断じて、雪を詰める為の物なんかじゃなかった。
　けれど今、何枚ものビニール袋のなかには強固な硬さを誇る雪球が目一杯詰まっている。
「リア充を爆発させようとするやつ……どーこーなーのーーーーっ！」
　ずーるずーると重たいビニール袋を引きずるようひっぱって、夏朝は敵たる元凶を探してさまよい歩く。