夏だ！　海だ！　大雪だ？！｜リアクション

夏だ！　海だ！　大雪だ？！

「悪かった、と思うわ」
　いろいろと正気に戻った麗子は、しおらしくうな垂れる。
「俺なら大丈夫です。ほら、ブルーも古手川先輩に懐いてる」
　誤解で吹っ飛ばされたというのに、修もブルーも少しも怒っていない。
　それどころか、ブルーは再び麗子の足にスリスリスリ。
　愛らしい仔猫に、ほっと肩の力の抜ける麗子。
「美味しい物でも食べて、気分を変えましょう。ほら、丁度海の家も再開された事ですし」
　修が指差す海の家では、極夜がせっせとカキ氷を作っていた。
「氷は、食べたほうが美味しいですよ」
　そういって、修は麗子の分はもちろんの事、その場にいた皆にカキ氷を振舞った。
『おいしい』
　吹雪が止んで戻ってきた海と刀は、気を取り直してカキ氷を満喫。
「創君、あーん」
　カキ氷を受け取った牡丹が、創の口にカキ氷を運ぶ。
　創はもじもじと照れながらも、素直に口をあける。
「これはスペシャルメニューですね！　食べる前に、撮影許可お願いします！」
　美咲紀がマスターが出した海の家特別メニュー『ムール貝とアサリのあっさり酒蒸』をデジカメに収める。
　激うまラーメンは当然の事ながらとっくに撮影してるし胃袋に治まってたりもする。
　そんな美咲紀の足元には沢山のお猫様。
　すりすりすりすり。
　吹雪の中、必死にお猫様を助けた美咲紀に懐きまくりだった。　
「うぅ、真央ちゃんはあきらめないのだ、サラシと褌……」
「焦らずとも、地道に頑張れば、夢はきっとかなうんじゃないか」
　浜辺でぐったりとしている真央に、同じくかなりぐったりしているねむるが慰める。
　麗子の猛吹雪に何とか一命を取りとめた二人は、そのまま浜辺にくたっていた。
「あれ、吹雪終わった？　……良かった！」
　夏朝は周囲の吹雪が消えったことに心底喜ぶ。
　吹雪で吹っ飛ばされた事ももう、彼女の頭にはない。
「砂のお城とか、素敵なの」
　猫型パペットといっしょに、夏朝はいそいそと砂浜アートに精を出す。
「大分落ち着いたようだね」
　颯は修と楽しげな笑い声を漏らす麗子に声をかける。
「あなたは、先ほどの……」
「覚えていてもらえるとは光栄だね」
「それは、印象的でしたもの」
「そうか。では、単刀直入にいわせていただこう。うちの会社の専属モデルにならないか？」
「え」
「いま弊社では専属モデルを探していてね。ニャコールを知っているかい？」
「にゃ、ニャコールですって？　あの、有名下着メーカーの……っ」
「そう、そのニャコール。下着という性質上、衣類で体型を誤魔化す事は出来ないが、君のような完璧なボディをもつ美女にここでめぐり合えたのは奇跡だろう」
　君の輝きを生かしてあげたい。
　そう語る颯に、麗子は圧倒されるばかり。
「返事は今すぐにとはいわないよ。気が向いたら、いつでもここに電話してくれ」
　どこからか名刺を取り出して、颯は麗子に手渡す。
　水着姿のどこから名刺を出したかは、言わないお約束だ。
　すっと手を上げて、颯爽と颯は去っていく。
「おう、カキ氷もいいけど、ラーメンもしっかり食ってけよ」
「汁までちゃんと飲んでね」
　一義と代真子が海の家から声をかける。
　こうして。
　嫉妬から始まった天変地異は、お腹いっぱい幸せいっぱいに幕を閉じたのだった。

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