夏だ！　海だ！　大雪だ？！｜リアクション

夏だ！　海だ！　大雪だ？！

「なるほど」
　杖子は実に冷静に周囲を観察していた。
　右往左往して吹雪の中を逃げ惑う観光客。
　杖子に熱い視線を注いでいた男共も、蜘蛛の子を散らすように逃げてゆく。
　ふむと頷き、杖子は何を思ったか雪だるまを作り始めた。
　ころころころころ。
　初めは両手でころころ雪を丸めて、ある程度大きくしたら、浜辺に転がして。
　ころころと転がし続けると、両手で抱えるほどの大きさに。
　もう一つ同じように作って、最初のよりも一回りだけ小さめに作り上げると、杖子は片手でひょいっと雪玉を大きな雪玉の上に設置した。
　どうみても大きさ的にかなりの重さを誇る雪玉なのだが、華奢な割りに杖子はかなりの腕力の持ち主らしい。
　そしてこの猛吹雪の中、そんなものを水着姿で作り続けれる理由は、ろっこん。
　非実在性少女を発動した彼女は、自分に当たる雪をすり抜けているのだ。
　寒さ自体は周囲の気温が下がっているのだから感じているものの、雪が直接肌に触れるわけではない為、気分的にあまり感じていないらしい。
「芸術ですよ」
　自分が作り上げた雪だるまに、それっぽい顔を描くと、杖子は満足げに頷く。
　ころころころころ。
　ころころころころころころころころ。
　何十回それを繰り返しただろう？
　流石に飽きたらしい杖子は、吹雪の散歩としゃれ込んだ。