夏だ！　海だ！　大雪だ？！｜リアクション

夏だ！　海だ！　大雪だ？！

「なんて嘆かわしいのかしら」
　真面目な風紀委員の矢萩咲は、眉尻をキリリッと吊り上げる。
　夏の開放感は、カップル達を野放しにしすぎ。
　あちらを見てもいちゃいちゃ。
　こちらをみてもいちゃいちゃ。
　後ろを見ても前を見ても周り中いちゃいちゃいちゃいちゃ……。
「行き過ぎたリア充共がイチャイチャと……風紀が乱れるでしょうが！」
　思わず竹刀を振りかざしたい所だが、ぐっと我慢。
　校内ならともかく、ここは浜辺。
　どんなに風紀が乱れきっていても、咲に取り締まる権利はなく。
「なぜ奥ゆかしい健全の付き合いが出来ないのか……全く嘆かわしくてストレスが溜まる季節ですよ」
　ふぅっと溜息をつくばかり。
　何度目かもうわからないぐらいの溜息をもう一度ついて、咲は海辺を巡回する。

「いいねぇ、いいねぇ。どこもかしこも恋愛観測し放題、とくらぁ！」
　骨削瓢はご機嫌にろっこんを振りかざす。
　彼の手から放たれるのは、小さな竜巻。
　ひひひっと笑う瓢の前で、竜巻に足元を救われたカップル達が思いっきり派手にすっ転んだ。
　カップル達はきょろきょろと辺りを見回すが、誰もいないし何もない。
　それもそのはず。
　瓢は、海辺からほんのり離れた高台で、双眼鏡片手にカップルウォッチングに勤しんでいたのだ。
「ほれほれ、もっと転んじまいなっ、ってなぁ」
　くくくっと皮肉気に口の端を歪め、瓢は双眼鏡に映るカップル達を根こそぎ竜巻に巻き込んでゆく。

「どうかな……似合ってるかな、創君？」
　ちょっと照れ気味に、添木牡丹は戌井創に尋ねる。
　清楚な白のビキニは、大人しい雰囲気の牡丹の良さを引き立たせ、意外と大きな胸をより一層強調していた。
「あ、う……うん、その……すごく、似合ってる、ね」
　どぎまぎしどろもどろ。
　創の瞳はどうしても、牡丹の胸元へ。
　童顔で子供っぽい創もやはり男の子なのだ。
　大好きな彼女のいろいろな部分に目が行ってしまうのは、本能。
「嬉しい……ぎゅうっ」
「わふっ？！」
　創を思いっきり抱きしめる牡丹。
　体勢的に、創の顔は思いっきり牡丹の胸の谷間へ。
「わふわふわふっ？！　って、わふ？！　……そ、その、えっと……あたってる、よ」
　何が当たっているかは想像にお任せ。
　嬉しいけど嬉しいけど嬉しいけど！
　牡丹が気づかずに、創の頭を撫で撫で撫で。
　創はわたわたと顔を真っ赤にして、頭を三度も撫でられた反動で可愛い犬耳と尻尾がぴょっこり♪
　ぱたぱたぱたぱたと、嬉しい気持ちのままに、創の尻尾は激しく揺れる。
「えいっ♪」
「わふぅ、冷たいっ。こっちもお返しに、えいっ♪」
　創と牡丹、二人とも海の水を掛け合い始める。
　水しぶきがきらきらと輝いた。