夏だ！　海だ！　大雪だ？！｜リアクション

夏だ！　海だ！　大雪だ？！

　旅鴉月詠は、ただひたすらにサンドアートに精を出していた。
「この角度は絶妙だな」
　着々と出来上がっていくサンドアートに、月詠は自画自賛。
　浜辺の砂は程よく海の水を吸っていて、ドロドロ過ぎずぱらぱら過ぎず。
　月詠の脳裏に思い描く姿がそのまま具現化したかのよう。
「こちらはまたまた、素晴らしいデザインのサンドアートですね！」　
　椿美咲紀がマイク片手に月詠に近付いてくる。
　新聞部の美咲紀は、夏の浜辺の様子を取材しに来ていたのだ。
「寝子島高校ですよね？　猫もこんなに沢山！」
　寝子島高校をそのままミニチュアにしたようなデザインと、周囲にくつろぐ姿の沢山の砂猫。
　本物の猫まで近付いてくるのだから、猫好きの美咲紀にとっては天国のような光景だった。
「こちら、撮影してもＯＫですか？」
「うむ。構わぬ」
「ありがとうございます♪」
　新聞に掲載するべく、美咲紀はデジカメで多方面から撮影。
　そうしてみると、より一層細部まで丁寧なつくりなのが見て取れた。
（カップル達もいいけれど、こういった海の芸術も良い記事よね）
　美咲紀のデジカメの中には、もう既に３桁近いカップル達が納められていた。

　雨崎荒太郎と西野町かなえは、海での初デートを満喫していた。
「かなたん、ほら、綺麗な貝殻だよ」
「ほんまや。綺麗やなぁ」
「海よりも空よりも貝殻よりも、かなたんが一番綺麗だよ」
「いややわぁ、恥ずかしいやないの」
「恥ずかしがるかなたんもかわいいよ。ほらっ」
　荒太郎は笑顔でかなえをお姫様抱っこ☆
　夏の太陽も照れて顔を隠しそうなレベルの熱々さはもう、留まる所を知らない。
　真っ赤になっているかなえを抱っこしたまま、荒太郎は海にジャーンプ☆
　はじける水飛沫に、かなえは思わず荒太郎にぎゅうっと抱きつく。
「はわわ、こーたん、やんちゃやなぁ」
「あははっ」
　笑いながら、荒太郎はかなえに顔を見られないように、より一層かなえをぎゅうっと抱きしめる。
（胸、当たってるしっ）
　そんなこと声に出しては言えないけれど、当然顔は真っ赤なわけで。
（かなたん、ほんとかわいいな）
　最愛の彼女が可愛くてかわいくて、荒太郎は幸せいっぱいだった。