夏だ！　海だ！　大雪だ？！｜リアクション

夏だ！　海だ！　大雪だ？！

「大雪が……って、何ですかこれは？！」
　不意の吹雪に、咲は愕然とする。
　遠くの空は青く高く、明らかに真夏真っ盛りだというのに、この浜辺だけ頭上に巨大な雪雲が。
　そして情け容赦なく降り注ぐ吹雪は紛れもなく冷たくて。
「明らかにおかしいわ。一体、何が原因なの」
　風紀委員として、こんな異常事態はほうっておけない。
　視界が悪くなっていく中、竹刀片手に咲はなんとか海の家に辿り着いた。
　海の家では、吹雪から避難した人々が溢れかえっていた。
「順番に、順番に並んで下さい。直ぐに温かい飲み物をご用意いたします。バスタオルが不足しております。お一人様一枚のみの使用でお願いします」
　極夜が声を張り上げて、不運に巻き込まれた人々を誘導する。
「哀坂さん？」
　咲が気づき、声をかけた。
「咲先輩！　咲先輩もいらしてたんですか」
「えぇ。哀坂さん、この吹雪の原因についてなにか気づいた事とかないかしら」
「急な事だったので、特に何も……。咲先輩は避難してきたわけではなさそうですね」
　大量の避難民で溢れかえる海の家。
　当然咲もそのうちの一人と思っていた極夜にとって、咲の言葉は新鮮だった。
（校外でもこの異常事態に率先して動く。風紀委員だからとはいえ、素晴らしい方ですね）
　極夜は軽く頷く。
「咲先輩、私も原因究明を手伝います」
「あら、アルバイトはいいの？」
「この状態では、続けられませんしね。原因を探し出して解決しないと」
　押し寄せた人々にあらかたバスタオルは配り終え、無料で暖かい麦茶も振舞えた。
　これ以上ここで出来ることはなく、極夜は咲のように一刻も早く原因解決に動くべきだと判断したのだ。
「そう、ならよろしく頼むわ」
　咲はきゅっと白い手袋を付け直す。