夏だ！　海だ！　大雪だ？！｜リアクション

夏だ！　海だ！　大雪だ？！

「どうなっているのかしらね……」
「吹雪がどこから来ているのか」
　咲と極夜は、海の家から離れ、浜辺を二人で見回っていた。
　たまに何か叫び声が聞こえたり、吹雪が勢いよく一定方向に吹っ飛んでいったり。
　真夏だという事もあるが、明らかにまともな吹雪ではない。
（ふむ……どうやら咲様はカップルの事が苦手……というより何か恐れている感じがしますね……）
　情報収集の為に聞き込みを続ける極夜は、ふとそんなことを思う。　
　こんな時でも凜として動じない咲なのだが、カップル達を前にすると、極夜の目には妙に挙動不審に見えるのだ。
　顔面が真っ赤になったり蒼白になったり。
　何かをこらえているようにも見えるし。
（ここは一つ、カップル達への聞き込みは私が担当したほうが良さそうですね）
「咲先輩、少し二手に分かれましょう。私は、カップル達から事情を聞いてみたいと思います」
　極夜の提案に、明らかにホッとする咲。
（カップル達を粛清したくなって困っていたのよね。助かるわ）
　咲は拳に負のオーラが溜まっていくのを感じていたのだ。
「じゃあ咲は、カップル以外を担当させていただくわ」
　極夜の申し出をありがたく受けて、咲は単身捜査に乗り出す。
　浜辺には吹雪で方向がわからなくなっている遭難者もちらほらで、咲は海の家の方角を誘導しつつ、何か変わったことを見なかったか確認する。
「それじゃ、この吹雪の元凶は女性なのね？」
　咲が確認すると、遭難者はこくこくと頷く。
「突然、えらいべっぴんさんが叫んだんじゃよ。うっぜぇんですのよーって。そんで、吹雪が起こっただ」
「何に対して怒ったのかしらね……」
「カップルに向かって腕を振り上げてたんじゃ」
「そう……」
　カップルに、怒り。
　その言葉に咲は深く頷いた。
　カップルに怒りがわかない人間なんて、この世に存在しないのだ。
　もし存在するなら、それはきっと、咲の天敵。
「貴重な情報をありがとう。海の家で、温まって待っていてね」
　咲は情報提供者に海の家の方角を指し示すと、諸悪の根源たる麗子を目指して歩き続ける。　