夏だ！　海だ！　大雪だ？！｜リアクション

夏だ！　海だ！　大雪だ？！

たっぷり海で遊んだ荒太郎とかなえは、ビーチパラソルの下でくつろいでいた。
　急な暗雲は、そんな二人の下にも情け容赦なく降り注ぐわけで。
「なんやなんや、吹雪？！」
「やたー！　これでカキ氷タダだよー？！」
　驚くかなえに、荒太郎は無邪気にはしゃぐ。
　ほんとに雪をかき集めだす荒太郎に、けれどかなえは慌てて止めた。
「あ、ダメやよーこーたん、雪ってけっこうバッチィんやで」
「ばっちいのー……？　そうだ」
　荒太郎は、いそいそとバックからお豆腐を取り出して、ぽとっとかなえの背中に置いてみる。
「ひゃっ！　もー、こーたん悪戯っ子やぁ」
「冷えたとうふだから、冷奴だねっ！」
「いったい、いつから持っとったん？　それうちが作った豆腐やん」
「かなたんのおとうふは美味しいから、いつでも買ってるし！」
「せやけど、ここにまで持ってきてるなんて」
「かなたんも、かなたんのお豆腐も、大好きだよ」
「ひゃうっ、ちょ、こーたんっ？！」
　ぱくっ。
　かなえの背中に乗せた豆腐を、荒太郎は食べ始める。
　吹雪で凍りついたお豆腐は、まるでカキ氷。
　しゃりしゃりしゃりしゃりと子気味よい音を立てながら、荒太郎はかなえごと美味しく食べている気分を味わう。
　水着姿の二人だが、こんな猛吹雪でも欠片も寒くない。
　二人の愛には、あつーい暑い愛があるのだから。
「スタッフが美味しくいただきまーす」
　冗談も交えながら、しゃりしゃり食べ続ける荒太郎。
　でも。
「くしゅんっ」
「かなたん？」
　じっと恥ずかしげにすわっていたかなえがクシャミを一つ。
「そういえば、ちょっと寒い、かな？」
　意訳『とっても寒いこと』
　周り中猛吹雪なのだから、そろそろクシャミぐらいは出るお年頃。
「うー……寒くなってきたで」
「タオル一緒にくるまろー」
　荒太郎が大きなバスタオルをバックから取り出して、かなえと自分をすっぽり覆う。
「ぎゅー。えへへ、こうして体くっつけとけばあったまるんだよ」
「ほんまやなぁ、こーたんほかほかや」
　どんな吹雪も嫉妬もなんのその。
　二人の間には誰も何も割り込めない。
　ついでに目線もバスタオルでシャットアウト。
　人目のない場所での二人がどうなっているかは、皆様の想像にお任せ。
　咲の目に留まりでもしたら、卒倒ものだったとだけ、付け加えて置こう。