睡魔と戦え！　リターンズ｜リアクション

睡魔と戦え！　リターンズ

【第２グラウンド：数学】

　夕暮れのグラウンド。椿美咲紀は踊り迫ってくる数式たちと戦いながら、数学を解いている。
「やーん、来ないで！」
　飛びついて来た不等式をノートで弾き返す。
「僕たちを嫌わないでよー」
「分かったから寄って来ないで！」
　踊る数式に気を取られながらも、慎重に計算していく。

　いや、正確には、慎重に数を入力していく。
（ふふ、私にはこれがある！）
　八神修から託された関数電卓だ。
（ここに数式を入れたらあら不思議。勝手に答えがぴこーんぴこーんて表示されるのよ）
　得意気になって打ち込む。

「よし、終わった！」
　大量の計算問題を捌き切り、ピッチャーマウンドに立つ桐島先生のところへ。数式たちも一緒になってついてくる。
「桐島センセ、どう？」
「ふん」一通り眺めると、鼻を一回鳴らした。「全て正解です」
「やった！」
「真に優秀だね」眼鏡の位置を直した指先を、美咲紀の手に向けた。「その電卓は」
「はい、八神印の頼れる味方です！」
「何が頼れる味方だ！」
　桐島先生が珍しく怒鳴る。数式たちも美咲紀も一緒になって仰け反った。
「本番で電卓の使用は認められないぞ」
「ひっ」
「数学は結果だけが求められる世界ではない。プロセスで働く脳のメカニズムこそが、重要なファクターなんだ」
「へ……何言ってるかわかりましぇん」
「まだ反省の色が足りないな。椿、残念ながら反省室行きだ」
「そんな……え！？　ひゃあ」
　虚数iに転ばされ、数式たちに持ち上げられる。
「ちょっ、くすぐったい〜……！」
　グラウンドに虚しく響く悲鳴、数式たちのかけ声。反省室へ送られる美咲紀、利器に頼りすぎたため敗退。

「あとちょっと……！」
　特大砂時計の砂が落ち切るまで起きていることが課題の２人も、いよいよゴールが見えて来た。

　しかし日暮ねむる、限界をすでにとうの昔に越えている。
（だめだ……まばたきしただけで絶対に落ちる）
　乾いた目は血走っていた。
「ぼ、僕は負けない！　これ以上赤点を取るわけには……」
　ねむるがこれまで持ち合わせていなかった根性が発動。
「く、こ、これで！」
　立ち上がり、頬を２発叩く。
「寝そうになれば体が叩き付けられて目覚めるはず……ラストスパートだ……」

「こんなに長時間意識がはっきりしていたのって、人生で初かもねぇ……」
　あくびを噛み殺し、冗談か本気か分からないことを言う真辺伸幸。
「しかもほら見てよ先生、俺頑張ったよ」
　計算用紙をヒラヒラと差し向けた。
「ふむ。よく解けているじゃないか」
「他にやることなかったしねー。ここで出来なきゃ、ずっと出来ないままになっちゃうのよー」
「いい心がけだ。よし、そろそろ砂が落ち切るな」

　いつの間にか競歩のサンマさん連中もいなくなり、東の空は闇がかかってきている。それは夢の中の全ての特別授業が終わることを意味していた。現実の授業中に居眠りし、迷いこんだ３１人の生徒は、ある者は生還し、ある者は反省室へと送られていった。睡魔扮する先生たちの特別授業によって、全ての生徒が成長したとはいえない。しかし確実に、これからの自分を変えていくためのヒントを得たはずだ。
　少なくとも、期末の点数には大いに反映されるので、ご了承下さい。

　砂は全て落ちた。
「やった、終わったー。やったね日暮さん」
　弾んだ声と共に、隣に立つ戦友を見上げる伸幸。
「……あれ」
　戦友の姿に言葉を失う。
「な、なんだと……」
　桐島先生も目を疑った。

　なんとねむる、直立不動のまま、鼻ちょうちんを作って爆睡していた。

「すごい、立ったまま……日暮さん、そんなにまで……そんなにまで眠ることに命を賭けているなんて……」
　まさに睡魔の申し子。いや、睡魔界のゴッド。伸幸は強烈なパンチでも浴びたかのようにさっきまでの眠気が吹っ飛んだ。

「完璧なバランスだ……」
　桐島先生も賞賛を送らずをえない。
　感動に打ち震えたのか、桐島先生は眼鏡を外し、裸眼でねむるの立ち寝姿を眺めた。
　そしてもう一度眼鏡を掛けると、静かにこう言うのだった。

「反省室行きだ」

椿美咲紀＆日暮ねむる
対決結果：負け　数学の点数がダウン！

真辺伸幸
対決結果：勝ち　数学の点数がアップ！

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あとがき

担当マスター：小西秀昭
ファンレターはマスターページから！

　おはようございます！　サービス授業を無事に受けられた方も、気がついたら終わってしまっていた方も、睡魔との戦いお疲れさまでした！

　無事に対決で勝利した方は指定の科目が１５点アップ、負けて反省室行きの方は１５点ダウン、笈地　行マスターの期末試験シナリオにも参加されている方には反映されますので、どうぞ楽しみにしていてください！

　今回は勝敗判定がありましたので、その部分だけちょこっと書いておきます。

　試験のコツは「傾向と対策」。過去問をどれだけあさり、傾向を探って、対策を練ったかで勝負は決まります。
　というわけで睡魔との戦いも、苦手やトラウマに正面から向き合い、対策をしっかり講じた方が勝ちやすくなっています。
　対策が書かれていなかったり、自ら敗北フラブを立てていたり、反省室行きを望んでいた方には、睡魔の誘惑に負け続ける結果となりました。また他の参加者の影響で勝ち負けが決まった方も多少いらっしゃいます。

　もっと他の人との協力で課題を乗り越えるアクションが届くかなと思ったのですが、案外個人プレイが多かったのが、今回のアクションを受け取っての感想です。その分皆様、キャラクターの内面の掘り下げ、愛着度に文字数を割かれていました。皆様のキャラクター愛を感じる瞬間でありました。

　各学科担当の先生との絡みもなるべく濃くしていったので、結果的に４０人近くのキャラクターを動かした感じで、私的にはヒーヒーものでした苦笑

　何はともあれ今回も楽しいアクションとなりました。皆様のご期待に添えるリアクションとなっていることを願っています。ダイアリーでの正直なご感想、いつも楽しみにしています！　では、小西秀昭でしたっ！

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