お嬢ちゃん、たこ焼きにしちゃうよ？｜リアクション

お嬢ちゃん、たこ焼きにしちゃうよ？

○その胸、何が詰まってるの？

　御剣刀は、毎日の剣の修行やバイトでいつも腹をすかしている。
　今日も腹が空いて、何か食べようと思ったらたこ焼きが頭に浮かんだ。
「よし、今日は九番屋でたこ焼きを食べよう」
　というわけで旧市街のたこ焼き屋「九番屋」を訪れた刀。
　タコさんウィンナー入り、チーズ入りなどバラエティーに富んだ美味しいたこ焼きに満足しつつ、入ってきた美少女に目がいった。
　揺れる、大きな大きな胸に。
（あの娘、胸でけえな……）
　口をもぞもぞ動かしながら、黙々とたこ焼きを食べ続けている女の子。
　それを見ている刀の耳に、客の話が飛び込んできた。
「タコといえばさー、漁港で２メートルもあるオオダコが消えたらしいじゃん？」
　九番屋の代理店主の海士野乙女が、客の若者に話しかけられている。
「美少女が？」
　無表情で強面、声にも抑揚がない乙女だが、結構話好きであるらしい。
（２メートルのタコが消えた？　擬態するミミックオクトパス？　人を食べる？）
「穏やかじゃないな、そんなのが潜んでいるなら捕まえないと」
　刀の表情が険しくなる。

　眼鏡にツインテールの少女、四野辺蘭月は、わくわくしながら九番屋を訪れた。
　関西出身で食べることが大好きな蘭月は、たこ焼きにはちょっとうるさい。
「ここの店のたこ焼きってどんな感じなんやろね。オリジナルのメニューも多いみたい。
　関西人としても買い食いマスターとしても食べてみなあかんわ」
「いらっしゃい」
　店主とおぼしき、無表情な若い女性が声をかけてきた。
「うーんと、チーズキムチお願いや」
　メニューをざっと見渡し、目についたものを頼んでみる。
（邪道なんて言うて片付けたらアカンよ。おいしいモンはおいしいんやから。ん……）
　ふと客の女の子に目がいく蘭月。
（なんやあの子ぉ、胸大きいな。あたしよりずっと……）
　ちょっと引け目を感じた蘭月だったが。
（って、たこ焼きと胸は関係あらへんわ！　たこ焼きかて中にタコが入ってなあかん。
　大切なのは中身や！）
　すぐに気を取り直した。　

　ついつい胸の大きな女の子に視線が向いてしまう刀だが、胸以外の特徴にも気付いた。
（ん？　あの娘の手何かおかしくないか？　何というか吸盤みたいな……って、）
　少女は水の入ったコップを手に持っていたが、どうやら指で掴まず、手のひらにくっついているようだ。
　白くヌメヌメしたそれは、明らかに人のパーツではなかった。
「てめぇか！」
　ガタッ！
　立ち上がった刀の椅子が大きな音を立てた。
　　
　九番屋のアルバイト暗道忍は、いつものように仕事を楽しんでいた。
「ははは、お客さんよく食べるね！　よほどお腹が空いてたのか？」
　問題の女の子の様子がおかしいのに気付いて、普段閉じている左目を見開く。
　ろっこん『ラプラスの瞳』の発動だ。
（普通の人間とは違うところが光ってるな……）
　だが楽観主義の忍の趣味は知識を広げる事。
（まぁ、お客さんには違いないか……）
　変なお客さんでもためらうことはない。
「お嬢さんなんか好みはないのか？　しゃべれないんならジェスチャーとかでもいいんだぞ？」
　だが女の子は虚ろな目をして、タコ焼きを食べ続けるばかりだ。
「取り合えず新しいの出来たけど食べるかい？　今度のはタコの代わりに貝を入れてみたものなんだがどうだ？
　飲み物は～塩水で良いか？」
　そこへ、殺気を漂わせた刀が近づいてきた。

このページにイラストを設定する