お嬢ちゃん、たこ焼きにしちゃうよ？｜リアクション

お嬢ちゃん、たこ焼きにしちゃうよ？

○ぬるぬる触手に注意！

（くっ俺はタコのおっぱいに視線を引き寄せられたのか、不覚！）
「このタコが！　絶対に許さないからな！」
　先手必勝！　と拳を繰り出す刀。
　だが。
　ひらり、いや、ぬるり、という感じで、少女は身をかわした。
　すでに刀は素早く距離をとって様子を窺っている。
　様子見であり本気のスピードは乗っていないが、かすりもしないとは。
　只者でないのは確かだ。
「お客さん、何するんですか！　手荒な真似はやめてください」
　忍が、またもや目を見開いたかと思うと、刀に突きを繰り出した。
（そっちも結構手荒じゃないか？）
　女の子に暴力を振るう迷惑な客と思われてはかなわない。
　日頃の鍛錬の成果で、すんでのところで避けた刀は、少女を指差して叫ぶ。
「そいつは化けタコだ！　人を食べるって聞いたぞ。その吸盤が証拠だ」
「やっぱ化けタコじゃん？」
「ひ、人食いダコ……？」
　ざわめく店内。客たちが少女の吸盤に気づき浮足立つ。　
「まぁ待て……この子はただ腹をすかせてここに来ただけだ、人を食べるってのも噂に過ぎないだろ」
　問題ない、という様子で答える忍。
「だいたい人を食べるんならもうとうの昔に俺は食われてるはずだぜ？　だから余り手荒な事はするなよ……」
　立ち上がったお客たちは忍の言葉に少し落ち着きを取り戻しつつも、半身半疑で胸の大きな少女から距離を取る。
「お客さんも人を食べようなんて思わないようにな？
　だいたい漁師に捕まってたってことはそれなりに理由があったんだろ？
　まぁせっかく来た訳だもう少し人間の食文化を楽しんでいくと良い。さっとそろそろ新しいのが焼き上がるな……」
　店主代理の乙女は、その様子を見ながら考えこんでいた。
「お兄さんはそう言うけど……人を襲うという噂が事実なら、島民の命がかかってるんだ。お客さんには正直に話すヨ」
　そして乙女がお客さんに向けて口を開こうとしたとき。
　
　関西育ちのスペイン人女子高生、マリベル・ロイスが期待に胸を膨らませながら店に入ってきた。
「ふっふーん、タコ焼きマイスターって地元で呼ばれてたウチが、寝子島のタコ焼きに疎いわけないやろ！
『九番屋』！今日のお昼はここに決定や♪」
（どこかで会ったような……学生支援部か？）
　刀がしばし考えていると。
「ふむふむ、内装もかわええしタコ焼きもおいしそうやし最高やな。
　パリっとした皮ともっちりした中身、そしてぷりっぷりのタコがあればウチはなんでもウェルカムやで！」
　マリベルは騒ぎに気づかず、空いていた席に着いた。
　胸の大きな少女の隣に。
「あ、店長さん～、まずはプレーンで、それからマヨネーズ付ってありますか？」
「あ、お客さん、そっちは危ない……！」
（最初の１皿はお店の出してくれた通りに、２皿目はマヨをかけてソースとの相性を……）
「えっ？」
　たこ焼きで頭がいっぱいになっていたマリベルの反応は遅れ、振り向いた拍子に隣の少女に肩をぶつけた。
「あ、すいません……」
　愛想よく謝ったが、相手からは返事が返ってこない。
（ってなんか無口な人やな。あ、肩もう一回……）
「逃げて、お客さん！」
　乙女が慌てて避難を促すが。
　もう一度ぶつかったとき、マリベルはその感触に硬直した。
「ってなんやこのぬるつき……しょ……触手？」
　マリベルは「ひと」であり、ろっこんに関しては全くの無知だった。

　触手はみるみるマリベルに絡みついていく。
　マリベルは呟く。
「は、はは、ウチが毎日タコ焼き食べてるからタコの神様が怒って触手様を派遣したんかな……」
　そんなわけないやん！と理性が弱弱しくツッコミを入れるが。
（夢、これは夢……！）
　タコ少女の手は触手に変わり、マリベルの服の下へと伸びていた。
　逃れようにも腰にしっかりと絡みつかれ、腕にも触手が巻き付いて。
　胸といわずお腹といわず、ぬるぬると触手が這い回り、締め付ける……
「ああ、このぬるつきもウチに対する罰なんやな……や……はぁ……」
　マリベルは思考停止状態に陥り吐息を漏らしている。
「暗道さん、やっぱり無理だ。こんな怪物を街に放つ訳にはいかないから、何とかここで食い止めたい。みんなにも、どうか協力して欲しい」
　ついに乙女が声を上げた。客に向かって頭を下げる。
「お詫びと言っちゃなんだけど、無事にタコを仕留められた暁には、私がたこ焼きにしてみんなに振る舞っちゃうよ！　もちろん私のおごり！」
　一部のお客は逃げ出そうとしていたが、乙女の言葉に歓声が上がった。

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お嬢ちゃん、たこ焼きにしちゃうよ？

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