恥じらい２００％！｜リアクション

恥じらい２００％！

☆シャイボーイたちの出会い

　３時間目の授業中。真辺伸幸はやたらとそわそわしていた。
（トイレにでも行きたいのかな）
　と近くで見ていた御剣刀は思ったが、少し違った。
（うう、なんだか急に……　いつも平気なのにー）
　やたらと頭に手を伸ばしている。

　キーンコーンカーンコーン。
　チャイムと共にトイレに猛然とダッシュ！
「いつものんびりしてるのにな……」
　呆然と見送るクラスメイトたち。
　信幸はトイレに飛び込むと、すぐに洗面台に向かった。
　タオルを水につけて、一生懸命に髪を直す。
「寝ぐせが……寝ぐせ頭が急に恥ずかしいのよー……！」
　元々、猫っ毛なだけで天然パーマでは無い。直せばちゃんとストレートになるのだ。
（やあ、いつも平気なのにー。
　平気な自分何処へ行っちゃったのカムバック……！）
　これまで寝ぐせを姉に注意されても、どこ吹く風と聞き流してきた。
　まさかいきなり恥ずかしくなるなんて。
　鏡を見て、９割方ストレートになったのを確認したのに。
　それでも寝ぐせが直っていない気がして落ち着かない。
　伸幸は足取りも重く頭をぎゅっと押さえて、下を向いて廊下を歩きだした。

　遠矢護も、落ち着かない思いをしていた。
（何だか人が近くに来るとすごくドキッとするんだけど、これは何かなあ？）
　外に出てれば大丈夫かな、と教室の喧騒を避け廊下に出ようとして。
　出会い頭にコツンと肩が少しぶつかった。
「！」
　軽く触れただけなのに。護の全身を恥ずかしさが貫く。
（うわああ、か、肩が当たっちゃった！
　こんな人がいる所で！　どうしよう、恥ずかしい！）
　なぜなのかわからないが、とにかく恥ずかしくてその場に座り込んでしまう。
「やあ、ごめんなさいー……」
　伸幸は頭を押さえたまま顔を上げ、ぶつかった方を見たが誰も居ない。
「ぬ？　下？」
　うずくまってる様子の相手に驚く。
「あれやあ、大丈夫ー……？」
　どうしたのか、と護の肩をポンポン、軽く叩く。
　自分もしゃがんで首を傾げて覗きこむ。
（ひゃああ、肩ぽんぽんされてる！）
　ますます焦る護。
「ダメです！　そんなことしちゃ……」
　つい言ってしまい、心配されてることに気づいて慌てる。
「あ、大丈夫です、ケガはしてません。あ、えーと真辺さんですよね。
　すみません、ごめんなさい」
「あ、いやー」
　覗き込んでいた伸幸の顔が赤らんだ。
　護の様子を見て……ではなく。自分の毛先がまだ少しハネてるのが見えてしまって、恥ずかしくなったのだ。
（他の場所も寝ぐせになってないかなぁ、心配なのよー）
　目の前の護に思わず迫る。
「俺の寝ぐせの場所教えて頂けれるとー……！」
　驚いた護はじっと伸幸の顔を見る。
「え？　髪の寝癖ですか？
　あ……後ろのその辺がまだちょっとはねてるかも……いえ、そこじゃなくて」
　慌てて後ろに手をやる伸幸だが、場所が違っている。
　（やあ、ほら自己紹介とか、大丈夫ー？　とか、何でうずくまってるのー？　とか
　聞きたいことも言いたい事も沢山あるのだけれど）
　だが今伸幸は泣きそうなのだ。
　恥ずかしすぎて、感極まって。
（真辺さんすごく困ってるみたいだから、さわって教えた方がいいんだろうけど……）
　護もまた悩んでいた。
（ダメだ、恥ずかしくてさわれない……！
　うう、どうしよう……もう休憩時間終わっちゃうよー）
「こ、ここですっ」
　ちょんっ。
　一瞬だけ伸幸の髪を触って、すぐに指をひっこめる。
（あわわわ、恥ずかしい！
　今のじゃ分からなかったかもしれないけど、もうこれ以上は！）
「ごめんなさいっっ！」
　護はそのまま背を向け、教室に戻ってしまう。
「え、えーっと、どこ？」
　やっぱりわからなかった伸幸である。
（ああ、でも行っちゃった、誰かタスケテ恥ずかしい……！！）
　その場にしゃがみこんだまま赤面している伸幸であった。

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