●２人２脚スイカ割り大会（３）●


【寝子ヶ浜海岸・スイカ割り大会会場】

　砂浜に半径１０メートルの円が描かれ、そのフィールド内にスタッフの手で、沢山のスイカがランダムに設置されていく。
「あっ、そろそろ大会が始まるみたいですよ？」
「ののちゃん、こっちこっち〜……ああ、またかき氷こぼしてる」
　綾辻 綾花、夢宮 瑠奈、野々 ののこの３人娘も、多くの観客たちと同じくその円の外周に陣取り、知った顔を見付けては、黄色い声援を送っているところだ。
「あっ、ブドー先輩も出るんだ！（手をぶんぶん）
　うきゃぽー！　ブドー先輩、あ！れ！　アレやってぇ〜！」


「夏だ！　海だ！　ＨＯＴだＺＥ！（ヌギッ）」







　ののこ達のその声援に、志波 武道がいつもの神速の脱衣で応えてくれた。
「ああん、神速すぎるぅ〜〜♪（じたばた）
　ゴッドスピード・ユー！　ゴッドスピード・ユー！」
　どういう声援だよ。まあともかく、寝子高制服☆トリエンナーレ・最優秀ねここー賞の知名度は伊達じゃないようだ。
「やっドーモドーモ、イエッス俺ブーメリアン！」
「って馬鹿兄貴はまーた……」
　観客席にニコヤカに手を振る武道を、例によって半ば諦め顔で眺めているのは、その弟の志波 拓郎。





（彩葉さん誘えばよかったな……タイミング逃し、）
「と言うかその前に……兄貴、聞きたいことが（むんず）」
「あーれーたー坊どーしたの顔コワーイ」
「何で自分が、勝手にエントリー……されてるんだ？」
「だってぇ〜オニーチャン、ここんとこ金欠気味なんだも〜ん。
　スイカ割りで商品券３万円だなんて、貧乏な俺の救世主！」
「それって兄貴の事情であって……自分に全然、関係ないよ……な？」
「（聞いてない）よーしたー坊俺達で参加して、
　優勝目指そうＺＥ！　俺２万でたー坊１万！」
「そして配分おかしくないか……？」
「好きな子にプレゼント……どう？（ヒソ）」
「仕方ない、やるからには本気で勝ちに行く……！（真剣）」
「さっすがたー坊こういう時だけ決断はやーい☆
　って、ダメー俺のメガネ握り潰しちゃだめーえぇ！」

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▼２人２脚スイカ割り大会・ルールおさらい

・半径１０メートルの円内に、ランダムにスイカが配置。
・制限時間内に一番多くスイカを割ったペアが優勝。
・選手は、バッターとナビ役の２人１組のペアで参加。
　★バッター：スイカを割る役。用意された棒を使い、目隠しをする。
　☆ナビ：目隠し無し。スイカのある位置を教え、バッターを誘導する。
・バッターは原則、ナビ役の選手をおんぶして運ぶ。
・ナビが地面に落ちてしまうと、その時点でペア共に失格。

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「えー、ですが、ナビの身体が地面に触れなければ、失格にはなりませんので、
　バッターはおんぶ以外の方法で、相方の選手を運んでもかまいません……」
　さて、そんな町長のルール説明そっちのけで、





「ぐへへ高い所から見る皆のセクシー水着姿美味しいなぁ！
　張り切っちゃうもんね！」
　武道ら選手たちの水着姿をガン見しているのは、桃原 空音。晴れて誤解も解け、仲直りした志田 朝陽におんぶされての、ペア参加だ。
「おい。もう１回言うが、他の選手にセクハラとかやめろよ？」
「う……うん！　優勝目指して頑張るのだ！　目指せ漫画３０冊分！
　商品券は当然全額あたしが……半分こね！」
　いちおう少しは、反省した様子の空音？
「よし空音、ナビは頼んだぞ！　アテにしてるからな！」
「おー朝陽くん、さっきまであんなにイヤがってたのに、けっこうやる気？」
「やる気っつーか、まぁ、勝負事は負けたくねぇからな」
　それに参加を決めたのは、空音をこれまで無視していた負い目があったからでもあり。
「よーし、じゃあ朝陽くん、本番前にさっそく練習してみるよ！
　右の雄っぱいもんだら右、左の雄っぱい揉んだら左ね！（わきわき）」
「ってやめろそこ触んな！　うわああ！」
「ぎゃー暴れないで朝陽くーん！？　あたしが落ちる落ちちゃうよ！」
「当たり前だ、真面目にやれ！　こんなんじゃ勝てねぇよ！
　もっとまともな方法でナビしろよ！」
「わかった、声でサポートね……ダメだったらお尻揉むよ！」
　ホントに仲直りしたのかな……。このペアの前途は、多難そうである。


◇


「桃原がなんだか楽しそうだな……」
　その空音と志田の様子をチラチラ気にしているのは、こちらの邪衣 士。結局このスイカ割りにあずさ理事長は誘えなかったようで、今回は鬼崎 あやめとペアを組んでのエントリーだ。





　そのあやめは、先ほどから自分を見ようとしないパートナーに、結構むくれていた。
（海……本当はお兄ちゃんと恋人になって来たかったのに……）
　失恋したその彼からプレゼントされた、麦わら帽子とネックレスを指先でいじりつつ、
（ううん、でもこのイベントは、新しい出会いを求める絶好の機会！
　お兄ちゃんに私を振った事を後悔される位に幸せになるんだから！
　そうですとも、この大会でいい男をＧＥＴし、ついでに商品券３万円分も掴んであげる！
　頑張れ、あやめ！）
　そう自分に言い聞かせると、パートナーの邪衣の腕を取って、こちらを振り向かせ、
「私がナビしますから優勝しましょうね」
　と、とびっきりの笑顔を向ける。ろっこん【リリスの微笑み】を使って、自分の指示に従順になるよう、パートナーを魅了しようとしたのだ。けれども、これは上手くいかなかった。邪衣がプイとそっぽを向いてしまったからだ。
（あ、あら……？）
「あ、あの邪衣さん、私を見て下さいませんか？」
「こんな格好で、恥ずかしくて目を合わせられるわけないだろ！」
　邪衣、理事長に着せられたミニスカメイド服を、まだ着たままだった！　邪衣士、メイド服のおかげで、あやめの誘惑を免れる！
「うう、くそう……理事長を誘いに行ったばっかりに、こんな目に。
　ああ、いや怒ってすまん。君が悪いわけじゃなかったな」
　ろっこんで誘惑されそうになったことには気付いてない邪衣、すぐにあやめに詫びて気を取り直し、
「ともかく、バッターは任せてくれ。
　ナビは無理だが、力にはそれなりに自信がある。
　ただしっかりサポートはお願い、サポートがあれば“迷わない”ので！（←フラグ）」