巨猫さま、襲来！｜リアクション

巨猫さま、襲来！

　そしてきょろきょろと辺りを見ていたルドは、元凶を探してやりたかったり。
（神魂の影響とか誰かのろっこんならよ、なんとか元に戻してやりてぇにゃー、だぜ）
　朧の気配がなくなったから、たぶんどこかで、おそらく巨猫様のところで透明になっているのは予想がついた。
（普通の猫よりでけぇからよ、すげぇもふもふしてそうだぜ）
　朧がいるであろう巨猫様の側に、ルドもいそいそと近付く。
　神魂の影響は、きっと、頭のいい誰かが解決してくれるだろう。
　だからまずは、このもっふり感を実感すべし！
（まあよ、俺もよ、もふもふしてっけどな）　
　自作の猫頭がかなりもっふりしていることは自覚がある。
　その証拠に、周囲の人ごみから子供達が指を指して喜んでいる。
「ままー、ねこさんにんげんみたいー」
　そんな愛らしい声も聞こえてくるぐらいに。
（猫が人間じゃなくて、人間が猫なんだけどなー、だぜ）
　イベント協力者と認識され、並ばずに巨猫様の隣に立てたルド。
　巨猫様に猫語で話しかけ始めた。
「にゃーにゃー」
　……巨猫様、不思議顔。
「にゃんにゃー」
　身振り手振りもつけてみる。
「……にゃーっ？！」
　巨猫様、ルドの頭で爪を研ぎ始めた。
　慌てて距離をとるルド。
「言葉が通じてんのかわかんねぇけどよ、仲良くなれたらいいにゃー、だぜ」
　ちょっとだけ冷や汗をかきつつ、ルドは手を差し出す。
　ちょこん。
　巨猫様がお手をした。
　むしろ、ちょこんというよりドスン、だったが。
　なんとか両手で巨猫様のお手に耐えるルド。
「仲良くなれたら、俺たち『ぶらざー』ってやつだぜ。なぁ、兄弟！」
　ガシッと友情を深める巨猫様とルド。
　その瞬間、巨猫様に驚いたのか、バイクが思いっきり転倒して吹っ飛んできた！
　咄嗟に、ルドは触れていた巨猫様と、駅前の猫の銅像をろっこんで入れ替えた。
　質量が近かった為か、一瞬だった。
　吹っ飛んだバイクは銅像をかすめて止まり、巨猫様はちょっとはなれた銅像があった場所で首を傾げている。
「何でこんなにでかくなったかわかんねーけどよ？　ブラザーは守り抜くってやつだぜ」
　ルドは思いっきり、巨猫様にＶサイン。
　観客からは再び拍手が沸き起こった。
　そして銅像の下のへんから、見知った声が響く。
「ルド、俺がつぶれかけたよ？」
「うおっ？！　なんだなんだ、だぜ？！」
「何おどろいてんよ？　……あ、そうか。ろっこん解除すっかり忘れてたんよ」
「わりぃ、そこにいたのな。でも巨猫様を守るためだったのだぜ」
「まぁ、仕方ないね。バイクも乗ってた人も垣根に埋まって無傷だし？　面倒ごとじゃなければなんだっていいさ」
　ケタケタと、朧は楽しげに笑い声を漏らす。
　観客は、ルドの腹話術だと思い、より一層喜んだ。
　

　そんな二人を、月詠は無言でさくさくとスケッチ。
　巨大猫と猫魔人にしか見えないルド。
（はたから見ていると、あの少年が元凶に見えてくるレベルなのだな）
　朧は既に姿が消えていたが、それまでのやり取りはずっと見ていた。
　ルドの猫の着ぐるみは可愛らしいけれど、ちょっとその辺で黒いマントを借りてこれれば、一瞬で猫魔人役が出来そうなのも事実だった。
　月詠はさらさらとルドと朧を描きつつ、ルドにはちゃっかり黒マントを羽織らせていた。