巨猫さま、襲来！｜リアクション

巨猫さま、襲来！

「わ、すごく大きい猫ちゃん」
　伊藤佳奈は、竹刀を担ぎなおしながら、足を止める。
　少し離れた場所からでもはっきりと分かる巨猫様たち。
「あの黒猫ちゃんが一番大きいかな。もふりがいありそうだよねぇ」
　わくわくと佳奈は黒巨猫さまに近付く。
　ある一定の距離からは、ゆっくりゆっくり、ほんのり警戒しつつ。
　……つんつん。
　そっと、驚かさないように触れてみる。
「黒猫ちゃん、ずいぶんおっきいけど、人馴れしてるのかなぁ」
　ゆっくりと撫でていると、ごろごろと喉が鳴るのが聞こえてくる。
（これって、ろっこんのせいなのかな？　どこまで大きくなるのかなぁ）
　想像するとわくわくが止まらない。
　もっともっと大きくなったら、佳奈が背中に乗れるかもしれない。
　今でも乗れそうだけれど、大きくなればなるほどいっぱい乗れるかもしれなくて。
（昔、お母さんが猫に乗れるアニメがあったとか話してたなぁ。あれってなんだったっけ。猫のしもべになるんだったかなぁ？）
　もふもふもふ。
　普段触れない巨大なふわふわ感に、佳奈の充足感はどんどんアップしていく。
（しもべって、手下とかそんな感じだから、この黒猫ちゃんとはお友達になりたいなぁ）
　きゅっ。
　大きな前足と、きゅっと握手☆
「よーし、次は虎猫ちゃんにいくよ」
　黒巨猫に十分満足した佳奈の次のターゲットは、虎巨猫！
　てくてくと人混みに紛れながら、なんとか佳奈は虎巨猫の前に。
　駒鳥が詰め寄る人々をうまい具合に誘導する。
「虎猫ちゃんは、大きくなったらやっぱり猫バスになるのかな？」
　自分の順番になった佳奈は、黒巨猫さまのときと同じように最初はそっと、次第におもいっきり撫で撫で撫で♪
「猫バスってね、子供の頃から何度も見ているアニメに出てきてたの。背中がバスみたいになっててね、みんなで乗れるんだぁ」
　佳奈は両手を広げて虎巨猫さまに伝えてみる。
　分かったのかわからないのか、虎巨猫さまははふぅと欠伸をした。
　そうすると、アニメの猫バスにますます似て見えた。
　もふっ。
　佳奈が虎巨猫さまの身体に顔をうずめてみると、黒巨猫さまとの違いが分かる。
　虎巨猫さまは、黒巨猫さまに比べて毛が滑らかで、夕日に反射する光沢も柔らかだ。
「うん、いっぱい堪能させてもらったよ。また会えたら、遊ぼうねぇ」
　順番待ちの人々を考慮して、佳奈は次の巨猫さまへ。
　最後の巨猫さまは三毛巨猫さま。
　和風の代表ともいえる三毛巨猫さまは、三匹の巨猫さまの中でも最大を誇っていた。
「きみってもしかして、アヤカシなのかも？」
　抱きしめるというよりは、ぽふっとダイブする勢いで、佳奈は三毛巨猫さまに抱きつく。
　佳奈の好きな漫画の中で、ちょっと太っちょで変わった猫が出てくる作品があるのだ。
　その漫画では、どう見ても普通じゃない丸っこい三毛猫はアヤカシで、主人公と共に色々な怪奇を体験する。
　三毛猫自体も巨大化するので、ぱっとみ、佳奈の目には三毛巨猫さまは漫画の中から抜け出してきたように見えた。
「ずーっと、大きいままなのかなぁ？」
　それとも、いつか小さくなっちゃうのかな？
　そんな事を思いながら、佳奈は三毛巨猫をたっぷりと堪能したあとは、ちょっとだけ大きくなっている駅前のお猫さまたちにターゲットを移し、もっふりもっふり抱きしめた。
　