ねばねばギブアップ！？｜リアクション

ねばねばギブアップ！？

●納豆談義

「あっ、荒太郎ちゃん、こんにちはなのだ～」
　戻ろうとする荒太郎に、後木真央が声をかけた。
　あまりの納豆押しメニューに呆然としながら、フツウのメニュー＋納豆な定食を頼んだところだった。
「あ、真央ちゃんこんにちは～」
「今日のメニュー、何かすごいのだ……ご、ごはんに甘納豆ってなんなのだ……ごはんなら浜納豆だと思うのだいや大量には食べられないけどなのだ……」
「浜納豆？　普通の納豆のこと？」
　荒太郎はきょとんとしている。
　トレイを持って周りを見回した真央は、テーブルについている八神修を見つけてそちらへ向かった。
　修のトレイの横にはノートが置かれている。
「修ちゃん、こんにちはなのだー。隣空いてるのだ？　ごはんの時間も勉強なのだ？」
「隣なら空いてるぞ。ああ、食事の後職員室へ直接質問に向かおうかと思ってな」
「それじゃ座らせてもらうのだ。しかし、温度上げて納豆の匂いきつくして本当に食わず嫌い直す気有るのかとかツッコミどころ満載なのだ……
　いただきまー…！？」
　文句を言いつつ食べ始めようとした真央だったが。
「あれ、向こうの天井から何か下がってるのだ？　納豆？」
「納豆が天井から……？　そう見えるな。ここからではよくわからないが」
　そちらを見た修も納豆にしか見えない小さな粒を確認する。
「あ、荒太郎ちゃんがきたのだ」
　荒太郎は修の向かい側の席に着き、かなえにマヨネーズがけ納豆を差し出す。
「混ぜればちょっとだけ美味しくなるよ？　お試しあれ！」
「うぅ、ひとくちだけやで？　ひとくち食べたらうちの分の納豆も食べてね……いくで！」
　こーたろーくんのため、と意を決してぱく、と納豆を口に入れ、ごっくんごくごく。
　吐き出したい気持ちをこらえ、味わわずに水で流し込んだ。
「た、食べたで……えへ、へへへ……」
　笑顔を作ってはいるが、しっかり涙目だ。
「やったー、とうふちゃん、えらい！」「えらいのだ～！」
　拍手する荒太郎と真央。
　修は納豆を食べながら言う。
「納豆は発酵食品で体に良い。だが無理に食べなくても、他の食材で補えばいいんだ。
　タンパク質なら同じ大豆で豆腐とか……な？」
「そ、そうやろ？！」
「ところで修ちゃん、浜納豆知ってるのだ？」
　真央も定食を食べながら聞く。
「塩辛納豆のことか。大豆に麹、小麦粉をまぶして発酵させて、サンショウやショウガなどの香料を加えているんだろう？」
「塩辛納豆って言うのだ？　さすが修ちゃん、やっぱり詳しいのだ！」
　真央が目を輝かせる。
「現在、納豆といえば納豆菌を発酵させた糸引き納豆のことだが、それは中世以降に登場したものなんだ。
　元々の浜納豆は味噌や醤に近い調味料だったようだな」
　説明しつつ、修は真央の食べっぷりをまじまじと見て感心する。
「それにしても真央……食べた物はその体のどこに行くんだろうか」

　御剣刀は、学食が納豆の日であることを聞いて、少しワクワクしながら食堂へやってきた。
（どんな料理があるんだろう、頼んだらレシピを教えてもらえるかな。楽しみだ）
　ちょっぴり喋り方が尊大な長髪の眼鏡男子、瀧原玲衣が刀の前でおばちゃんと話している。
「やぁおばさん、今日の学食は納豆ばっかりだねぇ、せっかくだから僕も何かいただこうか。
　ふむ、では納豆の天ぷらを」
　注文を決めた刀の声がそれに続く。
「おばちゃん！　納豆汁に納豆の天ぷら、冷奴と普通の納豆頂戴！」
「む、納豆に豆腐の組み合わせだと」
「冷奴に納豆をかけて混ぜ合わせる、それに醤油をかけて、熱々のご飯にかけて食べるんだ。
　これぞ大豆親子丼！　ヘルシーで美味しいんだよ」
　興味を示した玲衣に、刀は大豆親子丼について熱く語る。
「庶民の諸君ならではのメニューだな」
　素直に玲衣は感心した。
　出てきた注文を持って刀は席を探す。
「お、あれは雨崎と西野町？　仲良いな～」
　横目で見ながら、邪魔をしてはいけないと少し離れたテーブルについた。

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