ねばねばギブアップ！？｜リアクション

ねばねばギブアップ！？

●学食破壊の危機！

　玲衣の手元で、納豆が跳ねたように見えた。
「蜘蛛？　まったく嘆かわしい、蜘蛛は害虫を食べてくれるいわば益虫、そう毛嫌いしてしまっては、その恩恵に与ることも……
　おや、それにしてもずいぶん生きがいい納豆だと思っていたが」
　納豆蜘蛛はもう一匹いたのだ。それを手元の紙ナフキンで、ひょいと摘み上げる。
「なるほどこいつは蜘蛛か、納豆の糸を吐くとはまた珍妙な……
　しかし攻撃としては中々だぞ、この匂いを嫌うものもやはり多いしな」
　そして隣で巣を張り、納豆を吸収して成長を続けている大きな蜘蛛を見やりながらナフキンを折る。
「さてと、どうやら食えば食うほど強くなる奴のようだし、早いうちに離れて高みの見物といこう。
　これで【完成】と」
　玲衣のろっこん『理想素材（アイデアルシート）』は、紙や紙でできた物を金属のように固くして固めることができるというものだった。
　これでもう一匹の蜘蛛の被害は未然に防がれた……かに見えた。
「……持ち帰るのも一興だと思ったが悪戯に使うにしても蜘蛛の調教は流石にデータ不足だしね。
　ろっこんを解除して開放しよう……そうだな、頑張ってる子等の方に投げておこう、そして優雅にさり気なくばいばいだ」
　蜘蛛が飛んでいったのは、夢中で撮影を続ける美咲紀の背後。
　そのまま近くの納豆を吸収し、大きくなっていく……
「み、美咲紀ちゃん！　後ろなのだ！」
「え？」
　気づいたときには、美咲紀はもう一匹の蜘蛛の糸に絡めとられていた。

　新井米太郎は、寝坊してお弁当を用意できず食堂にやってきた。
「食堂に来るのなんて久しぶりだけど……なんか変な匂いがするね？
　って、う、うわああああ納豆だあああああ！！」
　鼻をつまみながら食堂のおばちゃんに訴える。
「す、すいません納豆が入ってないメニューを下さい！　匂いも駄目だから出来ればテイクアウトで……」
「今日は全部納豆メニューだよ。テイクアウトなら納豆サンドくらいかねえ。まあ試しに食べてごらんよ」
　しかし寧々の言葉は無情だった。
「ない……だと……？　くっ、残念だけど今日はお昼をぬくかな……食わず嫌いとかそういうんじゃなくて本気で納豆が苦手なんだよ僕」
　そこへ、めんどくさそうな顔で灯斗南がやってきた。
「納豆デー？　僕は納豆が嫌いなのに、なんてこった……」
「そうだよね！　これだけは譲れない！　こ、こんな食堂にいられるか！　僕は教室に帰らせてもらうよ！」
　斗南の言葉に、握手したい気分になった米太郎だが。
「まったく、何が納豆……だ……？」
　納豆蜘蛛の巣と糸でぐるぐる巻かれた美咲紀を見つけてしまった。
「ふええ、ぶちょー、助けてぇ」
　と目を廻したまま救助を求めている。
「……ぎゃああああ納豆のお化けだああああ！！　こ、こっちにくるなぁ！
　僕はネバネバしたものがだいっっっきらいなんだよ！　ほ、ほんとにダメなんだって！」
　パニクる米太郎の脇を、玲衣が悠然と通り過ぎる。
「んー、しかし納豆の可能性をもっと知りたいな、家に帰ったらレシピの研究をしてみよう」
　さすがに騒がしいのに気付いた食堂のおばちゃんの一人が、蜘蛛を見て唖然とした。
「ちょ、ちょっと！？」
　だが寧々は平然と言う。
「面白いことになってきたねえ。映画の撮影するんだってよ。蜘蛛が苦手なら向こうで休んでおいでよ」
「そう、撮影だと聞いたよ。庶民はああいうのが好きなのかね」
　玲衣は寧々のフォローをし、学食を去っていった。
　
　ネバネバの糸が飛んできて、米太郎の顔にベチョッと触れる。
　ネバネバ嫌いの米太郎の冷静さが吹っ飛んだ。
「くそうくそう！　僕以外にも困ってる人はいるだろうしこうなったら蜘蛛をろっこんで潰してやる！
　いや吹き飛ばしてやるぅ！　このネバネバした食堂ごと！
　納豆なんか！　納豆なんか大っ嫌いなんだーーーー！！！」
　一日のうち計23分間だけ重半径300M以内の重力を操れるろっこん『似非ヒロイズム』が発動する。
　近くのテーブルが軽々と持ち上がった！
「納豆デーに飽き足らず納豆蜘蛛？　ふざけんなよ……」
　普段は面倒くさがりだが納豆嫌いな斗南もキレていた。
　この騒ぎでテーブルの下に落ちていた修のノートに気づき、そっと拾い上げる。
「借りるぞ……」
　皆が蜘蛛に注目している隙に、ノートで顔を隠す。　
　斗南のろっこん『イグニッションハート（点火する心）』は、誰にも素顔を見られない時炎をイメージすることで発動する。
　斗南の手の平から、業火が沸き上がった！

　このまま学食は炎に包まれ、吹き飛ばされてしまうのか！？

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ねばねばギブアップ！？

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