ある一夜の夢噺｜リアクション

ある一夜の夢噺

　夢の世界にある、寝子島神社の境内に御剣刀はいた。
　この世界を出るためには青い夢飴を探さなければならない。
　境内を探していると、ふわりと背後に人の気配がして、振り向く。
　そこには海が立っていた。
　小山内もこの世界に来てたのかと声を掛けそうになって、手に持っているもののことを思い出す。

『かたなくんもいたんだ』
『ああ。青い夢飴は見つかったのか？』

　筆談は慣れていないため難しいが、スケッチブックに文字を書いて話す。
　反対に、普段から筆談の海は慣れたもの、さらさらと書き込んでいる。

『まだ』
『一緒に探そう』
　
　そう刀が書き込めば、海は笑顔で頷く。
　刀と海はとりあえず境内を探すことにした。
　並んで歩き探しつつ、そういえば、と刀はスケッチブックに書き込む。

『黄色い飴の効果ってことは、俺のことを思い浮かべたのか？』

　それを見て、何故だか海の顔は真っ赤に染まった。
　何でだろう……？　と、口には出さず、疑問に思う刀。
　しかし海の答えは

『ひ、ひみつっ』

　どうやら教えてはもらえそうにない。
　そんな筆談をしながら探していたら、賽銭箱の所に青い夢飴が２つあった。
　刀は思わず駆けていって手に取り、海に見せる。

『あおいあめ、みつかってよかった』

　海が書き込んだスケッチブックを見せると、刀は同意するよう大きく頷いた。
　これで夢から醒めることができる。
　目的を達成したので、刀は夢の番人にひとこと言いに行くことに決めて、黄色い夢飴を取り出した。

『きいろいあめであいにいけるのかな？』

　そう書いた海が、傍で少し暗い表情をしている。

『どうしたんだ？』

　尋ねてから、刀の所へ来るのに海が黄色い夢飴を舐めてしまったことを悟る。
　どうすべきか悩む刀に、海はもしかしたら、と思い切ってスケッチブックに書き込んだ。

『て、つないでみない？』

　ここは夢の中だ。
　案外簡単に、一緒に行けるかもしれない。

『いいよ、一緒に行こう』

　刀は頷いて、飴を口に入れると、海と手を繋ぐ。
　そうして、声の主……夢の番人をイメージした。