鈴島、森に隠された古代遺跡｜リアクション

鈴島、森に隠された古代遺跡

●暗い回廊

　いくつかの曲がり角と、いくつかの行き止まりがあった。
　一行は、罠を警戒して、一歩一歩慎重に進んでゆく。
　先頭は３フィート棒であたりを叩きながら歩く双葉仄と、後木真央に＜にゃにゃにゃがおー！＞で呼び出された三毛猫がおー。
「がおー、真央ちゃんのちょっと前を歩くのだ」
　こうして罠探知はこのふたり（ひとりと１匹？）に任された。
　棒と猫……ちょっと頼りないが、仄は大丈夫だと胸を張る。真央は、がおーを信じたい気持ちでいっぱいだ。
　巴も猫鳴館から持ってきた梯子を３フィート棒的に使えないかと考えていたのだったが、なにしろ嵩張るので狭い遺跡内部で振り回すわけにもいかない。いざというときまで月詠のスケッチブックの中で待機させておくことにした。

　しんがりを務める坂内梨香に、地下帝国皇帝らしくスコップを担いだ骨削瓢が並んだ。
「ちょいとお話しないかい？」
「な、なにかしら」
　少し身構えた梨香を見て、瓢は呆れた調子で訊ねる。
「坂内はん、なんで男が嫌いなんだい？」
「……べつに。Ｙ染色体にあまり慣れてないだけよ……話せないわけじゃ、ないんだから」
「Ｙ染色体ねぇ。まいいや。ほら、このまえ龍宮旅館で赤い壺と屏風を見つけたろう？　あっしはあれから考えたんだがね、あれが紅梟に似て、かつ寝子島の地図だというなら、地下帝国の紅梟の壁画もきっと地図だろうねぇ」
「そうね……そう考えるのが自然だと思う」
「同じ地図なら２つの間にどういう違いがあるのかねぇ。おそらく屏風は島周辺の海にあるナニカを、紅梟は島内にあるナニカを指し示してるんだろうが……」
　梨香は、瓢の言葉にじっと耳を傾けた。どうやら瓢の考えが自分より先に進んでいると考えたようだ。
「たしか、地下帝国の壁画の間への入り口にも、龍宮旅館の赤い壺にも、鈴みたいな印があったねぇ。あれはシーノの家紋かい？　鈴に鈴島……あっしはどうも繋がりを感じるんだが」
「それは――」
　口ごもる梨香。

「あやめ」
　何気ない顔で話に耳を傾けていた花村チカが鬼崎あやめをつついた。
（あっ、坂内さん困ってるんですね？　わかりました、お兄ちゃん！）
　あやめは、今が出番と気合を入れると、
（すみません、個人的な恨みはありませんが、お兄ちゃんにいいところ見せたいので！）
　と胸の内で謝りながら、瓢の肩に手を当ててにっこりほほ笑んだ。
「骨削さん」
「ん？」
「ええと……」
　＜リリスの微笑み＞の発動には５秒必要だ。この５秒をつくるため、あやめは話題を探す。
　５、４、３、……
「あ、あそこになにか……」
　あやめが適当に指差した先にあったものを、瓢が摘まみあげた。

「おや、こんな所に亡骸が」

「きゃあああっ」
　あやめは、チカに抱きついた。
　けらけらと瓢の笑い声が回廊に響く。
　これをきいて驚いたのか、三毛猫がおーが駆けだした。
「おい、猫！　私の３フィート棒より先に行くな！」
　仄がそう叫んだ瞬間。

　ガタンッと行く手の床が落ちて、がおーは手足をばたばたっとさせたかと思うと、視界から消えた！