鈴島、森に隠された古代遺跡｜リアクション

鈴島、森に隠された古代遺跡

●森の探索２

「遺跡～遺跡～どこなのだ～♪」
　こちらは、探検部班。部長の龍目豪、１年生部員の北原みゆき、そして、最近入部した後木真央だ。逆巻天野も探検部だったが、別方向を探したいということで今回は班が分かれた。探検部では、夏休みに鈴島キャンプを計画している。今日はその下調べも兼ねての部活、みたいなものだった。
「遺跡が見つかったら校内新聞のネタにもねこったーのネタにもなるのだ！　行け行けどんどんなのだ！」
　お洒落ジャージに部活Ｔシャツ、黒の七分丈パンツの真央は鼻歌を歌いながらずんずん進んでいく。
「真央ちゃん、ひとりで先に行ったら危ないよぉ」
　みゆきはそういいながら豪の手をぎゅっと握った。面倒見がいい部長はその手をちゃんと握り返すと、みゆきに向かって笑顔を向けた。
「この前は『ぶらり、マタ旅！』のＴＶクルーと一緒に来たんだが、時間がなくて森に少し入って引き返しちまったんだ」
「私も３度目の鈴島だけど、いままで遺跡なんて気づかなかったなぁ」
　それにしても……と、みゆきは真央と豪の大荷物を見る。
　真央の赤猫リュックがパンパンなのは先に述べたとおりだが、豪もまたかなりの荷物だ。飲み水やロープなどもあるが、テントが一番嵩張っているだろうか。
「どのくらい時間がかかるかわからないからな。キャンプの準備はしっかりしてきたんだ」
　さすが部長、備えあって憂いなしだ。
　森の中に何か変わった物はないか、とみゆきはあたりを見回した。
　黒い羽根が落ちている。
「……カラスの羽根、かなあ？　羽根ペン作れそう」
「無闇に落ちてる羽根に触らない方がいいぞ。病気持ってるときもあるから」
　そういわれたこともあり、特別珍しくもないかな、とみゆきはそれには触れずに通り過ぎた。

◇

　逆巻天野と大天使天吏は、島の南西方向を探索していた。
　天吏はまず、杉などの人工林の形跡を探した。人間が作った遺跡があるなら、その周りにはなんらかの人工物があるのではないかと考えたのだ。じっさい、いまの日本で、人の手が入っていない森はごくわずかだと聞く。しかし、それらしい形跡は見つけられなかった。
　そこで今度は天野の提案で、水場を探すことにした。
「水って生活に必要なものだし、何かヒントがあるかも」
　島は小さく、川や湖というほどのものはないようだった。しかし、調べた資料によれば人が住んでいた時期もあるという。まさか海水を飲んでいたわけではないだろう。とすると、井戸はないだろうか。
　足元に目を落としながら歩く。
　探し始めてずいぶん時間が経った気がした。
　このあたりは丘のようになっていて傾斜があり、見通しがききづらいこともあって、余計に感覚が狂う。
　天野はふう、と額を拭った。
「同じところを何度も回っている気がするな……爆発の伝説も気になるし。まるで宝探しのようだよ」
　天吏は落とし穴を探るかのようにトングを地面に刺しながら推理する。
「爆発……鈴島は噴火で出来た？　火山が噴火して、溶岩に空気が入ると穴が出来る。大きな遺跡を隠すよう作るのなら、そんな穴のような地理的に隠せる場所に作るんじゃないかしら……」
　ふいに、ぬるりとなにか空気が歪んだような感触があった。まるで、なにかの境界を超えたかのように。
　と、天吏のトングに、固い感触。
　明らかに人工物とおぼしき、直方体の石だ。
　顔を上げると、まるで魔法をかけられたように妙にうねる枝振りの木が生えていた。
　絡み合う根元はこんもりとしていて、蔦や小枝に覆われている。天野がその蔦や小枝を打ち払った。
「――これは……」

　森にピィィーー、と長い笛の音が響き、発煙筒の煙が上がった。